「1人暮らし…!!?」




「あぁ」




「なんでいきなり?」




「親父が自立心を高めろとか突発的なこと言って。それで」




「……(冬獅郎のあの性格はおじさん譲りなんだ)」




「ま、来年は大学受験で勉強に集中できっからいいけど」








高2の夏



冬獅郎の口から1人暮らしになることの報告を受けた



前のようにすぐに会えなくなることが分かったら






寂しくなった








「お前は進学しねぇんだろ?」



「うん、勉強したくないし」




「そっか。あ、そうだ」





会話の途中で冬獅郎は何かを思い出したように



鞄からある物を出した










「ほら、コレお前にやるよ」



「何コレ?カギ?」



「あぁ、俺の部屋の合鍵」



「え」



「お前にだけ特別」



「ホント!?!!」



「あぁ」







ちょっとはにかんで笑った冬獅郎







”特別”



その言葉がなんだか新鮮で



その一言だけで


幸せになれた気がした





嬉しくて手の中の小さなカギを



ぎゅっと




握り締めた













時々はあたしの手料理なんかも作ってあげたいな、



とかその時のあたしは


色んな幸せな光景を頭の中で思い描いた




気づくと顔が緩んで笑ってた









「お前顔がすげぇことになってっぞ」



「いいのv嬉しいから笑ってるだけ」



「そうかよ」






どことなく優しく笑うあなたの顔が



あたしの瞳に映し出された











昔から近くでお互いを感じてた



でも初めて



見える距離が遠くなった




ちょっと離れることは寂しいけれど





このカギが







あたしたちを繋いでいてくれる



気がした





見えなくともあなたはここ