小さな黒猫は



薄汚れたダンボールの中で





小さな声で鳴いていた









いつもの帰り道には公園がある



その公園の入り口近くにその猫は捨てられていた






小さな鳴き声は泣いてるようにも聴こえた








まだ小さな頭を撫でてあげると



喉をゴロゴロ鳴らして甘えてくる








「可愛い…捨てられたの?」





漫画みたいに黒猫に問いかけてみたところで



答えてくれるはずはない







「あ!待ってて!今、家から何か食べる物持ってくるね!!」







こういうのに軽い優しさはいけないことは分かってた






でも



何かしたかったんだ


















***






「おーい、アホ」



「ア、アホ言わないでよ…!」



「さっさと帰ろうぜ」



「…ぅ…あ、ご、ごめん!あたしちょっと用事あってさ…さ、先に帰るねー!!!!」




「あ゛?あ、あぁ…」






あたしはランドセル片手にダッシュで靴箱に向う



シロちゃんには悪いけど



あたしには大事な用事が!










ってその用事っていうのはあの黒猫にエサをやることなんだけど…



でも毎日楽しみに待ってくれてるとあたしも嬉しくてついつい上機嫌になる










あたしは家にある鰹節のパックを1つと


今朝のご飯に出た味噌汁の出汁に使った煮干を



持って行けるだけ持って行った







少ないお小遣いを貯めて



猫缶でも買ってあげたいな、





あたしはエサを持って行く途中そんなことを考えた

















「ごめんね、今日はこれだけしか持って来れなかった」





そんなに対して猫はニャーと鳴くだけで
















持って来たエサはすぐに無くなってしまいそうだった




なんでもいいから他にも持って来てあげれば良かった、





と小さな黒猫の頭を優しく撫でながらため息ついでに思った




すると












?」



「!!!……シロちゃ、ん…」



「お前何してんだ?あ」





ニャー





「猫…?」



「う、うん…最近ココに捨てられた…子猫!可愛いでしょ!;」



「お前の用事って……コレか?」



「えー…あーハハハ……ぅん」



「何?お前がエサとかやってんの?飼わねぇのに?」



「ぅ…ぁい……えっと……」



「飼う気もねぇのにそういうことしねぇ方がいいんじゃねぇの?」








まだ小学4年生なのになんてしっかりしてちゃんとしたこと言ってんだよ



もうちょっと可愛いこと言えないのか





この時のあたしはこんなこと思ってないけど



時々思い出すと思うこと











「だって!………可哀相じゃん……」



「だけどよー「お腹減ってるのに知らんぷりなんてできないじゃん!シロちゃんのご悪人!!!」



「おいおい…」







あたしこそ何口走ってんだろうか…















「お前ん家じゃ飼えねぇの?」



「……お母さん…動物苦手だって言ってた…」



「そっか……」









「なら俺が飼ってやるよ、この猫」



「えっ!!!嘘!!?」



「嘘じゃねーよ、つうか嘘言ってどうする」



「ホントに?ホントにホントに??!?!??」



「あぁ」



「えっ…でもお母さんとかお父さんたちは…いいの?」



「今から頼んでみる」



「……ダメって言われたら?」



「そんなこと言わせないようにする」




「どうやって?」



「テキトーに泣きつけばいいだろ?」



「そんなのでホントに大丈夫なの?」



「大丈夫だっつーの、おい!ほら猫来い」





少し汚れた黒猫はジタバタと身動きをしながら日番谷の小さな手の中に収まった






「シ、シロちゃん…もっと優しくしない、と…」



「いってー!テメ、何すんだよ!!!」



「あーあ…」




どうやら可愛い顔して少し強暴なのか。



それかただ嫌われているだけなのか。




日番谷の手の甲に痛々しい猫の引っ掻き傷が目立っていた




























****








「シロちゃん!昨日の猫……飼える?」



「おう!飼っていいってよ!」



「ホントー!!!ヤッター!!!」



「でもアイツ俺に懐いてくれなくてよ…面倒くせぇ」



「シロちゃんが優しくしないから〜」







昨日の引っ掻き傷プラスに



また猫から引っ掻かれた傷が多数あった









「ねぇねぇ今日シロちゃん家遊びに行ってもいい?」



「あ、あぁ別にいいぜ」



「ヤッター☆あ。そういえば名前ってもう決めたの?」




「ん…あぁ、決めたぜ。黒猫だからクロ」



「……………………ご主人はシロで、ペットは…クロって…」



「シロはお前が勝手に言ってるだけだろが」



「もうちょっと可愛い名前にすればいいのに…!」



「例えばなんだよ」




「…………タマ、とか…?」



「俺とあんまレベル変わんねぇじゃん…」



「うるさいな、…じゃあー今日帰りにシロちゃん家寄るね」



「なんか差し入れ頼むな」



「じゃあ猫缶ねv」



「…………」







子猫にも会える



シロちゃん家にも行ける






早く放課後にならないかな




黒猫幸せを運ぶ