「なあ、本当について行かないで大丈夫か?」
「当たり前でしょ、冬獅郎が来たら変だし」
「いや、別に変じゃねぇと思うけど・・・」
HR終了後、私が鞄を持って教室を出て行こうとすると冬獅郎に止められた
私のはっきりとした反応に冬獅郎は言葉をくぐもらせると、少し考えて観念したのか「わかった」と言って私に背を向けた
「話ついたら連絡よこせよ」
「うん、わかった」
私は廊下に出て3年生の校舎に向かった
Sodden girl
暫く廊下を歩き、学年の区切りになっている渡り廊下に入った
するとその瞬間、急に背中に寒気が走った
「?」
素早く後ろに振り返るものの、特に怪しい人は誰もいなくて
私は首を傾げながらも仕方なくまた歩き始めた
なんなんだろ今の・・・
この感覚、前もあった気がする
考えながら渡り廊下を渡り終え、3年生の教室がある校舎に着いた
「トイレ、寄ってって平気かな」
寒気を感じたせいかトイレに行きたくなり、
携帯の時計を見ながら近くにあったトイレに入った
中には誰も居らず、私は右から2番目の個室に入る
携帯をポケットに入れ鍵を閉めた瞬間、トイレの電気が落とされた
「え、何」
慌てて出ようと鍵を開けるが、外側から凄い力で抑えられていて開かない
ガタガタガタと私がドアを揺すっていると、少し離れた所で蛇口が捻られる音がした
嫌な予感がする
「なんで懲りないのかな、アンタはさぁ」
外側で女の子の声がした
その声は苛立っているような、私を潮笑するような声で、
どこかで聞いたことがある。でも思い出せない。
ふと壁見上げると、手とホースが見えた。
「ちょ、やめ」
私は反射的に腕で顔を覆う、
それとほぼ同時に頭から大量の水をかぶった
「アンタにはこういう格好がお似合いよ」
けたけたと笑いながら女の子はそういうとホースを離した
ホースはそのまま壁に下げられ、今だ出続ける水は私を狙う
私は背伸びをして片手を伸ばしホースを掴むと外側に投げた
バチャン、と水たまりにホースの落ちる音がする。
手で顔にへばり付く髪を除け、もう一度ドアノブを捻ると簡単に開いた
外にはもう誰もいなくて、ホースが水を出しているだけ、
私は取り敢えず少し離れた所にある蛇口を閉める。
するとポケットに入れていた携帯のバイブレーションが鳴った
画面を見ると恋次からの着信。私はゆっくりとボタンを押し、耳に当てた。
「も、しもし・・・」
「おい、いつまで待たせんだよ」
「3、年校舎の女子トイレ・・・」
「は?」
ブツ、プーップー・・・
私はそうとだけ言って電源ボタンを押した、そしてその場にしゃがみ込む
今度は自分のアドレス帳を開き、冬獅郎に電話をかけた
「・・・もしもし?」
「冬獅郎・・・、寒い」
「はあ?何言ってんだよ」
「悪いんだけど、さ。教室にある私の鞄取ってきてくれる?3年校舎の女子トイレにいるから」
「は?おい、何があったんだよ」
「水浸しになっちゃった、それじゃよろしくね」
私は携帯を耳から離し、電源ボタンを押す
携帯はこれ以上濡れないようにポケットにはしまわず、手で握りしめた
あの声、確かに聞いたことがある
前もこんな嫌な思いをした時、そう、階段から落とされた時。
「じゃあ今の女の子が・・・」
私が探してる犯人・・・・
****************
「おい雛森、先帰っててくれ」
「え?ちょっと日番谷君どうしたの?!」
「がまたやられた!」
「え?!わ、私も行くよ!」
教室にまだ残っていた冬獅郎は、電話を切られると、
急いで自分の鞄との鞄を持ち、走って教室を出て行った。
桃も自分の鞄を持って後を追う。
「なあ雛森、お前保健室行ってタオル何枚か貰ってきてくれ」
「ちゃん濡れてんの?」
「ああ、なんか水浸しらしい。寒いとも言ってたし相当濡れてんだろ」
「そっか、わかった。じゃあ貰ってくるね」
「おう、3年校舎のトイレにいるから」
桃は脇にあった階段に向かうと下っていった
冬獅郎はそれに目もくれず走り続けた
*******************
「3年校舎の女子トイレって、此処の事だよな」
その頃恋次は切られた電話の内容が気になり、
が口にした女子トイレの前にやってきた
「なんか抵抗あるけど・・・仕方ねえよな」
恋次は鞄をトイレの入り口の横に置き、
あたりに人がいないのを確認してから女子トイレのドアを開けた
そして中の光景に目を見開いた
「なんでこんな水浸し・・・」
「・・・恋、次?」
「?!」
丁度ドアを開けると死角になる所にいてが見えなかったのか
声を掛けられ恋次はビクリと肩を揺らしたが、の姿を見るとすぐに顔を顰めた
「おい、どうしたんだよ」
「見ての通り、水掛けられたの」
「また、嫌がらせか?」
「っ!」
恋次がにそう尋ねると、少し遅れてトイレ前から冬獅郎の息を切らせながらの声が聞こえた
は声を聞いて立ち上がり、恋次の横を通り過ぎトイレを出る
「荷物ありがと」
「おい、なんでこんなことに・・・」
「あれ、タオルないや」
は冬獅郎に返事をせずごそごそと自分の鞄の中を探り続ける
冬獅郎はため息を吐いてから自分の鞄からスポーツタオルを引っ張り出すとの頭にかぶせた
「もう少ししたら雛森がタオル持ってくる。それまでそれで我慢しろ」
「あ、ありがと」
「それで、どうしたんだよこれ」
「ああ、これはね・・・」
「んなこと、言わなくてもわかんだろ!お前のせいだよ」
が髪を拭きながら答えようとすると、
それを遮って後ろから少し荒げた声が返ってきた
冬獅郎はその声の本人を無言で睨む
「先輩には聞いてません」
「うるせぇな、お前がそうやってこいつに近寄るからっ」
恋次は頭に血が上ったのか冬獅郎に掴みかかろうとした
しかし、その腕はによって阻まれる
「恋次・・・、ごめんなさい」
「な、」
「私、やっぱり冬獅郎が好き、周りから酷い目にあったって、好きなの」
だからもう恋次とは付き合えない。とがいうと、
恋次は掴み掛かろうとしていた腕をゆっくりと下げた
「もう、絶対俺には振り向かないのか?」
「うん、」
「何があっても、こいつを選ぶんだな」
「うん、ごめんなさい・・・恋次」
が強く頷くと、恋次は深く溜息を吐いての頭に手を置いた
「いや、俺こそ付け込んで悪かった。頑張れよ、なんかあったら力になるから」
「ごめんなさい、ありがとう、恋次」
涙目なの頭を恋次はがしがしと撫でると、冬獅郎に視線を向ける
「もうこいつには手出さねぇから」
「はい」
「でも、俺もこういうことした犯人を捜すのは手伝うぜ?」
「・・・はい、よろしくお願いします」
「あっ、日番谷くーん!タオル貰ってきたよー!」
冬獅郎が小さくお辞儀をすると、
5〜6枚タオルを手にした桃がこちらに走ってきた
---END---
水掛けられるとか、古典的ないやがらせですよ、ね?←
今回は少し長めで疲れました〜-A-;