「私のジャージ、サイズ大丈夫だった?」
「うん、ありがとう桃ちゃん」
取り敢えずトイレから私達は出て、恋次の教室に移動した。
びしょ濡れの制服は着替えて、桃ちゃんのジャージに着替えた私はタオルで髪を拭きながら近くの椅子に座る。
ゴムを持っていなくて髪の毛でジャージが濡れてしまうから、もう一枚乾いたタオルを肩にかけた。
I have three companions.
「にしても、随分とまぁ典型的ないじめのやり方だな」
恋次は私の姿を見ながらそういうと、呆れた溜息を小さく吐いた。
それにつられて私も溜息をしてしまう。
私はなんで2度までもこんな思いをしなくちゃいけないのか。
というか、2度とも相手は近くにいたのに。
なんで私は犯人の顔を見れていないんだろう、悔しすぎる。
「犯人の顔誰も見てねぇしなぁ・・・」
「・・・ごめん、」
「あ、いや、別にお前が悪いんじゃねぇよ」
冬獅郎は「しまった」という顔をして、慌てて弁解をした。
すると、何かを考えていた桃ちゃんが口を開く。
「犯人見たって人、いたよね?」
その言葉で私も冬獅郎も恋次も、一斉に桃ちゃんの方を向いた
視線を感じた桃ちゃんは少し言い辛そうに眉をへの字に歪ませると、
「ほら、私のこと・・・犯人って言った子」と言った。
「あ・・・あの眼鏡かけてて、黒髪でお下げ髪の子のことか」
「うん、そう。ちゃんはあれからその人のこと見かけた?」
そういえば、あの子はあれから見かけない。
いくらなんでも1度くらいすれ違ったりしたっていいはずなのに。
なんでだろう?おかしいよね、それって。
私が首を横に振ると、桃ちゃんは話を続けた。
「私、その子が何か握ってると思うの」
「でも、そいつって同じ学年なのか?」
他学年だったら会わない可能性もあんだろ?と冬獅郎は首を傾げた。
確かにそうだけど、私はあの時年下とも年上とも思わなかったし、それに、、、
「あの子、桃ちゃんのこと知ってたよ」
普通他学年の人が他学年の人の名前なんて知らないと思うし。
桃ちゃんはそんな他学年に名前が広まってるような人でもないし。
それに私に向かって言ったんだから後輩だったら「先輩」って付けるだろうし、
先輩だったら「さん」は有り得るけど、呼び捨てかもしれないし
「じゃあ、やっぱり同じ学年って可能性が高ェんじゃねぇか?それか俺の学年。」
恋次は自分の学年で一致する人がいないかを確かめているのか、
「眼鏡、黒髪、お下げ髪・・・」と呟きながら目を瞑った。
「でもあれから見かけてないってことは先輩の可能性の方が高いのかな?」
「・・・ねえ、日番谷くんに心当たりはないの?」
「俺?」
桃ちゃんがそう言うと、冬獅郎の肩がビクリと揺れた。
自分にそんな質問がきたのは予想外だったのだろう。
「そっか、その人は冬獅郎のことが好きだから・・・」
「そう、だから、今まで日番谷くんに好意をよせた人にそう言う人はいなかった?」
「そんなこと言われても、別に全員に告白された訳じゃねェからな・・・」
冬獅郎は眉間に皺を寄せて考える素振りを見せた。
何度か首を捻るものの、思い当たる人物はいないようで、首を横に振る。
冬獅郎も駄目だと、もう手がかりとなりそうな人は誰もいない。
というか、冬獅郎一体何人に告白されたことあるんだろ・・・
なんて今考えるのは良くないよね。
「でも、そしてら先輩の可能性は低いかもしれない」
「え?」
「俺そんな先輩に告白されたことねぇし」
冬獅郎は頬をポリポリと掻きながらそういうと、不意に私の方を見た。
多分私のことを気にしてくれているんだと、思う。
やっぱり世間一般的に自分の好きな人のそういう話は聞きたくないし。
でも今は必要な話なんだから、仕方ない。
私が小さい声で「大丈夫」と言うと、冬獅郎は「ごめんな」と小さく返してきた。
「それじゃあ、やっぱり同学年って考えた方がいいかもしれないね」
「んー、じゃあ俺はお前等の学年の奴等知らねぇからあんま役に立たねぇかもな」
「そんなことないよ、本当に、・・・みんな有り難う」
自分のことじゃないのに、私のために、こんなにもしてくれる。
桃ちゃんは、私が犯人だと決めつけて凄く傷つけてしまったのに、
恋次も、何度も振り回して、私のことなんて嫌いになったっておかしくなのに、
2人は私のためにいろんなことをしてくれる。
そう思ったら、自然と涙が滲んできた。
するとスッと横から手が伸びてきて、私の手を暖かく包み込んだ。
顔をあげれば目の前には冬獅郎がいて、優しい顔をしてくれてて、「良かったな」と私の耳元で呟いた。
「も、やめてよぉ、涙止まんなくなるじゃん・・・!」
「あっ、日番谷くんがちゃん泣かした!」
「おい何してんだよ日番谷!」
「ばっ、違うだろ!」
ポロポロと落ちてきた涙は凄く温かくて、暖かくて、
私は泣きながら笑った。
大丈夫、周りにこの3人がいてくれれば、私は立っていられる。
---END---
犯人に繋がるキーワードがついに!
いやはや、なんか暖かいなぁこの4人て´`