今日はいつもより性質が悪い。バケツで水をぶっ掛けられた。
いつもは暴力だけなのに、多分私が引かなかったのが気に食わなかったんだろう。
「うぅっ・・・ひっ」
「またやられたのかよ」
日陰ばかりの体育館の裏で、私はびしょ濡れの制服も気にせず蹲って泣いていた。
するとより一層私の前の日陰が濃くなって、少し顔を上げると不機嫌そうな晋助と目が合った。
私は目を背けるように俯く、すると我慢しきれなくなった涙がまた頬を伝った。
「ゎ、私にっ、近づかない方がいいって・・・、」
「んなこと今更言ったって遅ェって、この前も言ったろ」
晋助はそういうと、覆いかぶさるように私を抱きしめた。
水を頭からかけられたお陰で冷え切っていた身体に一気に熱が戻ってくる。
「ちょっ、晋助!濡れちゃうよ!」
じわりと、晋助のYシャツが濡れていくのがわかる。
恥ずかしさを隠すためにも私はそういって無理やり晋助を自分から離した。
でも晋助の顔を見るとまた不機嫌そうな顔を私に向けている。
「元はと言えば俺のせいなんだから濡れたって構やしねえだろ」
「別に晋助のせいじゃない。それに抱き合ってたらまた・・・」
「また、なんだよ」
しまった、と思って私が黙り込むと、晋助はハァと溜め息を吐いた。
「、ジャージ持ってるか」
「え、あ、ううん、昨日持って帰っちゃった」
「ったく、じゃあ俺の貸してやる。教室にあるから」
「え、でも・・・」
晋助は「いいからここで待ってろ」っと言って立ち上がる。
私は大人しく従うことにして、寒さを堪えるために再び蹲ると、また頭上でハァという溜め息が吐かれた。
「それから、」
「ぇ?何・・・」
「今日から俺と付き合え。いいな」
「え・・・?は?」
晋助は少し頬を染めて、視線を逸らしてそういうと、教室に向かうのか私に背を向けた。
でも私は晋助の言っていることの意味がわからず、つい晋助のYシャツの裾を掴んで止めてしまった。
「ど、どういうこと・・・?」
「一回で理解しろ馬鹿」
Yシャツを掴まれた晋助は振り返ると、私の目の前にきてしゃがみこんだ。
そして何をされるかと思うと、凄い力で両頬を晋助の両手で掴まれた。
「友達じゃ、守ってやれねえだろうが」
「ちょ、し、晋助、」
「今のまま俺が手ェ出したら、悪化すんだろ」
「ほ、ほっぺが・・・、」
「いい加減俺の気持ちに気付け馬鹿女」
晋助は早口で捲くし立てると、私の両頬に残る涙の跡を指で拭った。
少し痛いのを我慢しながら晋助の顔を見ると、先程より頬が赤く染まっていた。
「晋助、ありがと。・・・好き。」
「めんどくせーな、ンなこと前から知ってる」
Step up!
(んじゃ、にこんなことした奴等シメにいくか)
(ちょ、それはっ・・・くしゅんっ)
(っとその前にジャージだな・・・)