1組に着くと、後ろのドアからこっそりと中を覗き込む。

といっても3人もいるから十分に目立ってしまうんだけど・・・。

私は教室を一周見渡して、窓際の一番後ろの席に彼がいることに気がついた。







「あ!いたいた日番谷くん!」

「ちょっとそんな興奮してると気持ち悪がられるわよ」

「おっと、失敬失敬」



私が日番谷くんを指差すと、乱菊が腕を組みながらそう言った。

コホンと、一度咳払いをした私は改めて日番谷くんに視線を向ける。

彼は本を読んでいるみたいでずっと本を見つめていた。



、話しかけてきなさいよ」

「ええ?!私まだ1回しか喋ったことないのに?!」

「善は急げよ!ほら、行ってきなさいって」

「ちょ、無理だって!無理無理!あ、桃、代わりによろしく!」

「えええっ、私〜?!」



勢いでここまで来たのはいいけれど、いきなり声をかけるなんてそんなこと流石にできない。

そう思って私は桃の肩を後ろからぐっと掴むと、1組に押し入れた。

桃も流石に抵抗をして戻ろうとするけど、圧倒的に私の方が力が強かった。



「私だっていきなりじゃ何話していいかわかんないよ〜っ」

「そんなこと言ったら私はもっと無理でしょ!」

、アンタそんなんだから彼氏できないのよ!潔く行ってきなさい!」


「雛森達、さっきからそこで何してんだ?」



急に今までとは違う声がして、その声の方向を見てみると、

気付かないうちに日番谷くんが目の前まできていて不思議そうにこちらを見ていた。

私はあまりにも驚いて桃から手を離すと急いで乱菊の後ろに隠れる。



「あ、日番谷くんっ、」

「なんか用か?雛森俺ぐらいしかこのクラスに知り合いいないだろ?」

「えっと、私は特に用はないんだけど・・・」



桃は困ったようにそういうと、乱菊の後ろに隠れている私をチラ見した。

私はその視線から逃げようとより一層乱菊に隠れようとするが、ガシリと肩を掴まれた。

その手を目で辿ってみると、乱菊とバッチリ目が合った。



「冬獅郎、今日は雛森じゃなくてがアンタに用があるのよ」

「は?・・・?」



乱菊はそういうと私をぐいっと自分の前に引っ張り出し日番谷くんの前に立たせた。

私は慌てて乱菊を見たが、当の本人はしてやったりという顔をして私の肩を離そうとはしない。



というか乱菊今「冬獅郎」って言ったよね?私知り合いとか聞いてないんだけど!!!名前呼び捨てだし!!



「ああ、この前の」

「ぇ、えっと、私っていうんですけど・・・」

だろ?名前までは知らなかったけど名字は知ってる」

「えええっ」



「そんな馬鹿な!」と言ってしまいそうになるのをぐっと我慢した。

私何か名前を知られるような悪行をしただろうか!うああ最悪!イメージ最悪!



「時々雛森から話聞いてたからな、」

「あ、ああ、桃からか!なるほど!」

「で、用ってなんだよ」



安心したのも束の間、私は黙り込んでしまう。

乱菊があんなことを言ってしまったせいで次の言葉が出てこない。

正直に「日番谷くんに会いにきました」なんて当たり前だけど言えないし。



「えっと・・・、用なんだけど・・・」



取り敢えず無言じゃいけないと思って話を切り出してみるも、その先がない。


どうしよう、何か貸してもらいに来たってのが自然かな。

次の時間ってなんの授業だっけ・・・。・・・あ、体育だ。



「あの・・・その、ジャ、ジャージを貸してほしいなーって、」

「ジャージ?」

「次の授業体育で、ジャージ忘れちゃって・・・」



私はそこまで言うと「しまった!」と思い口を閉じる。

辞書とかならまだしも、身につけるものをまだ会って間もない相手に貸すわけがない。

というかなんでわざわざ私が日番谷くんに借りに来るのか謎過ぎる。そういうのは女友達だろ普通!


私が脳内でパニック状態になっていると、いつの間にか日番谷くんが目の前から消えていた。



「あ〜〜〜っ、私ったらどうしよう乱ぎ・・・「ほらよ」



乱菊に助けを求めようと口を開いたと同時に、腕にぼすっと何かを乗せられた。

視線をそこに移すと、学校指定の青色のジャージ。

日番谷くんもいつの間にか先程いた場所に戻ってきていた。



「上着だけでいいんだよな」

「え、ええっ?!ぁ、うん、上着だけで大丈夫!ありがとう!」

「今日3時間目体育だったから臭かったら悪い」



日番谷くんは頬を掻きながらそういうと、私にちゃんと渡してくれた。

私は両手でしっかりそれを受け取ると、ジャージを凝視してしまう。



「ちゃんと借りれてよかったじゃない!」

「よかったねちゃん!」

「え、あ・・・う、うん」



バシバシと乱菊に肩を叩かれたのと、二人の声で私は我に返る。

乱菊を見ると嫌味くらいにニヤニヤしていた。



「もうすぐ予鈴鳴るぞ、行った方がいいんじゃねぇか?」

「あら本当!ほら行くわよ!」

「う、うん。日番谷くんジャージ洗って返すね!ありがとう!」



「別にそんなのいいのに」と日番谷くんは言ってくれたけど私は首を横に振った。

そして私達は日番谷くんと別れて、急いで更衣室に向かった。




















MK5!!
(マジで)
(奇跡の)
(5秒前!!)

(うわぁああああああ)
(日番谷くんの着用済みのジャージが私の手にぃいいいい)