「顔よーし、髪よーし、制服よーし、鞄よーし!完璧!」
私は玄関にある大きめの鏡の前に立ち、口に出す所を順に見てから暫くさよならしていたローファーを履いた
久しぶりのローファーは前より固く感じて、少し履き慣れない。
携帯を開くともう8:20を回っていたので、私は急いで寮の玄関を出た
学校までは10分もしないから、遅刻することはないだろう。
少し歩くと学校まで続く土手に出る。
土手は強風の日はスカートが捲れないように格闘したり、髪もボサボサになるから嫌だけど、
今は沢山の桜が咲いてるからとても綺麗だし、ふんわり吹く風も心地が良いから好き。
私が土手の入り口の砂利道を歩いていると、数メートル先で桜の木を見上げている男の子に目がいった。
ダークブラウンの綺麗な髪の毛で、背が高くて、同じ制服を着ている。
後ろ姿だから顔はわからないけど、多分かっこいい。
私がそんなことを思いながら男の子を見つめていると、視線に気付いたのか急に男の子が振り返った。
眼帯で隠された左目と、ギラリと獲物を狙うように光る鋭い右目。
慌てて目を逸らすものの、私が歩けば歩くほど男の子に近付くし、男の子は一向に歩かず私を見つめたままで、
仕方なくあと男の子まで3メートルぐらいの所で私は足を止め、男の子と目を合わせた。
その姿を見た男の子はニヤリと口だけで笑い、ゆっくりと私の方に歩み寄ってきた。
「おいお前」
「は、はい」
「俺と同じ学校の制服だよな」
「そうですけど・・・」
男の子は目の前まで来ると、私の顔を覗き込むようにして話しかけてきた
近くで見た顔は凄い整っていて、やっぱりかっこいい。でも視線は怖い。
「つれてけ」
「は・・・?」
「学校に」
男の子は短くそう言うと私から少し離れ、目で「早くしろ」と訴えかけてきた
学校ならもうすぐなのにと思いながらも怖いから言わず、私はゆっくりと歩き出す。
「転校生・・・?」
「ああ、つか今までの話でわかんだろ」
「む、確かに・・・。あ、名前は?」
ふと私は気になった質問を男の子に投げかけてみた。
すると男の子は少し考えた後、口角を上げる。
「お前は?」
「え、あ。私は」
「ふーん、か」
いきなり名前呼びされて心臓がドキッと跳ね上がった。
名前では呼ばれなれてるけど、なんだか恥ずかしい。
私は顔が赤くなってるんじゃないかと思い、そっと顔を逸らした。
「で、きみは・・・?」
「高杉晋助。晋助でいい」
「え、名前呼び?!」
「なんだよ、嫌か?」
男の子からの要望にびっくりして、私は思いっきり逸らした顔を戻した。
私の目に映る男の子は少し不機嫌そうな顔をして私を見つめていた。
「ぃ、いや、いいけど!晋助ね、晋助!」
「お前、普段男を名前呼びしないのかァ?顔赤いぜ」
「ち、違うよ!これはその、ちょっと暑いの!」
晋助はニヤニヤと面白可笑しそうに私の顔をまじまじと見つめてきた
それがまた恥ずかしくて私は頬を染める。
その光景を見てまた晋助は笑った。
私はもういてもたってもいられなくなり、視線から逃げるように走り出す。
「そんな見ないでよー!!」
「あ、オイ・・・!」
桜の花唇と共に
(私の前に現れた)
(獣のような男の子)
(名は高杉晋助)