私達が体育館に着いた頃にはもう結構生徒が集まっていて、

3年Z組の並ぶ所の先頭には銀八がいた。

私達はできるだけ後ろの方に小さく輪を作るように腰を下ろした。

あんまり前に行くと銀八に絡まれるし、この座り方してるから他の先生にも注意を食らってしまうから。





「ねえ、新しく来る先生にイケメンいると思う?」


「ははーん、今年は先生狙いなんですかィ?」


「ば、ばか、そんな意味で言ったんじゃないし!」





なんで総悟の奴はそういう解釈をするんだか。

私よりアンタの方が年上好きなくせに。私知ってるんだから色々!

そう思いながらトシに視線を向けると、彼はその視線に気付いて即答した。





「どうせじいさんばあさんか、イケてない若者だろうよ」


「イケてないって・・・」


「まず一そんな先生にイケメンっていねぇじゃねぇか」


「そうですぜ、は少女漫画の読み過ぎなんでさァ」


「いや、そんな読んでないし」





まだ総悟はさっきのネタを引きずってるのか、と思うと自然に溜息が出てきた。

でもそういえば、失礼だけど過去にあまりかっこいい男の先生をお目にしたことがない。

最近、可愛い女の先生は目にするようになったけど、なんでかっこいい男の先生はいないわけ?

男の子はいいよね。なんだか損をしている気分だ。

まあ、学舎にそういうのを求めるのってどうかと思うけど、

でも、それが分かっていてもやっぱり着任式の度に期待しちゃうんだよなあ。





「一人くらい来たっていいじゃない・・・」





私がそう呟くと、前に司会の先生が現れて、始業式が始まった。

すぐに校長先生の話になって、私は一気に睡魔に襲われる。

校長というものは、なんでこんなに話が長いのか。

もっとまとめて話してよ、持ち時間2分ぐらいにするとか。

そんなことも段々考えられなくなってきて、私は簡単に夢の中に入ってしまった。




それから何分経ったかはわからないが、私は後ろにいたトシによって起こされる。





「お、おい・・・」


「ふぁ、え、へ?な、何トシ」


「ちょ、前見てみろ。お前の望んでいたイケメンがいるぜ」





まだ完全に目が覚めていない私にそういったトシは驚いているような、あきれているような顔をしていた。

私は言われたとおり前を見てみる。もう着任式は始まってるらしく、ステージには何十人もの先生が立っていた。

今は一人一人の先生が順番に真ん中に立って挨拶をしているみたいで、ステージの真ん中には黒髪の先生が立っていた。

なんだか、誰かを思い出す。あれ・・・?





「んんんんんんんっ?!?!?!」





私は思わず立ち上がり目を凝らした。

嘘、え、え?なんで彼があそこに?!

つかいつの間にあんな大きくなったの?!え?!ビックラ●ト?!


多分、見間違いではないのだろう。私はこれでも視力には自信がある。

でもそしたらおかしい、なんで、なんで、目の前に晋助(ちょっと大きいけど)がいるの?!

なんか服装もホストというか、なんていうかエロティックになってるし!



私が驚きすぎて口をパクパクさせていると、私を座らせようとトシに腕を掴まれた。

でもそれを制御するように、ステージに立つ晋助似の先生が私を見て口を開いた。





「おい、そこの女子生徒。急に立ち上がってどうした」


「ぇ、あ・・・」





その一言で、多くの生徒が私の方を向く。

まあ当たり前だけど、やっぱり恥ずかしい。

無視してくれて良かったのに!マイク通しちゃうし!

私はビックリしすぎて立ち上がっちゃっただけだし、どうしよう。

今更なんでもありません、で座ったら、ただの変人だし。

そういえば、先生の名前はなんて言うんだろう。





「ぁ、あの!先生名前なんて言うんですか・・・?!」


「あァ?お前さては寝てやがったな。良い度胸してんじゃねェか」





なんだか口調とかも晋助にそっくりだ。

声は違うけど、どことなく雰囲気は似てるし。

つか晋助は何処に行ったんだろう。まさかホントにあの人が晋助・・・なわけないよね。

私が先生の言葉そっちのけでそんなことを考えていると、

先生はそれに気付いたのか眉を顰めながら言葉を続けた。





「・・・・・・おい、名前は」


「えっ?!名前?!・・・です、けど」


「おし、今日の放課後保健室へ来い、いいな」


「は・・・?」





折角閉じかけていた口がまた開いてしまった。

なんで保健室?意味わかんないんだけど。

つか結局名前は?私が先に名乗っちゃったし。


私が再び話そうとすると、後ろから腕を思いきり引っ張られて、強引に座らされた。

そして「お前がそうしてっといつまでも終わらねぇだろうが」とトシに頭を叩かれた。

私は渋々大人しくすることにして座りなおした。すると先生は再び何もなかったように話し始める。


もう一度、よく先生を見ると、やっぱり晋助によく似ている。一体どういうことなんだろう。

まだまだ気になることがいっぱいあるから、とりあえず放課後言われたように保健室に行ってみようと思った。



































先生
 (ねえトシ、あの先生の名前なんてゆーの?)
 (確か・・・・・・高杉・・・)
 (た、高杉っ?!)
 (しん、・・・すけ・・・?だったと思うぜ)
 (!!!!!!!)