始業式が終わって、私達は早々と教室に戻ってきた。
戻る間も私の頭の中はさっきの先生のことでいっぱいだった。
なんで、高杉晋助が2人いるんだろう。
大きさとは違うけど、顔と声と雰囲気は殆ど一緒。
年が違うんだから双子ってわけじゃないだろうし、兄弟・・・?
でも兄弟だったら同じ名前なんておかしいよね?
「お前まださっきの先生のこと考えてんのかよ」
「まさか、あんな奴がいいんですかィ?」
「だって気になるじゃん!あとぶっちゃけ顔はタイプだけど」
教室に入って私は自分の席に着いた。窓側から2列目の一番後ろ。
総悟は私の前の席で、トシは右隣。
総悟もトシも自分の席に座って、私の方を向いた。
ここに帰ってくる間に私が何故ああなったのかを全部話した。
でもやっぱり2人は生徒の方の高杉晋助を見てないから、反応はイマイチ。
「まあ、放課後保健室行ってみりゃァわかることだろ」
「そうだけど・・・どうしよ、襲われたら」
「何言ってんでィ、抱くくらいならゴリラ抱いた方がマs・・・ぐふっ!」
「ん?なんか言った?総悟」
総悟はお腹を押さえてその場に蹲った。
え、いや、私なんもしてないし、なんも知らないし。
お腹でも壊したんじゃないの?
私が冷たい目で総悟を見下ろすのを見てトシは溜息を吐くと、
ふと不思議そうに窓を指差した。
「おい、そこに席なんてなかったよな?」
「ぇ?あ、そういえば」
私の左隣は人数の関係で空間があった。
昨日までその空間があったはずなのに、気付けば机と椅子が置いてあった。
新学期に今までなかったところに、誰も使っていない机と椅子、
これってまさか・・・。
私がそう思ったのと同時に、前にあるドアが、ガラガラと音を立てながら開いた。
入ってきたのはHR時と変わらず怠そうな銀八と・・・
「あーーーーーーーーーっ!!晋助!!!!!」
朝ぶりの晋助だった。
私の大きな声にクラス中が反応し、一斉に銀八と晋助に視線が向く
入ってきた二人はビックリしたのか少し目を大きくさせていて、
すぐに戻った銀八は立っていた奴等を座らせた。
「なんだこいつ知ってんの?元彼とか?」
「変な妄想膨らませんなよ天然パーマ」
「え、何、朝の仕返し?先生の硝子のハート粉々になっちゃいそうなんだけど」
私が目を逸らしながらそういうと、銀八は泣き真似をしてみせた。
ちゃんと言うときはビシッと言っておかないと、このクラスは信じるからダメだ。
私だって晋助とは今日出会ったばっかりなんだし
「無視?!・・・ま、いいや、んじゃ高杉適当に自己紹介して」
「ああ、・・・はい。高杉晋助、・・・です。よろしく」
無愛想に短くそう言い、「終わりました」と銀八に告げた。
晋助って敬語使えるんだ(ぎこちなかったけど)、とか思ったことは絶対に本人には言えない。
それはさておき、やっぱりクラスがざわつき始めた。
そりゃそうだよね、顔も名前も一緒だし。
これでみんな私の気持ちがわかっただろう!!
私はトシと総悟の顔をチラ見してみると、やはり二人とも驚いた顔をしていた。
そのあと視線を晋助に移すと、ばっちりと目が合う。
私が目を離せないでいると、銀八が話を続ける。
「みんなが言いたいことは俺もなんとなく分かっけど、同一人物じゃないからなー。
だから絶対にいじめはやめろよー。んじゃ高杉、席はの隣な」
銀八は私の左横の空席を指差した。
高杉は無言でこっちに向かい、自分の席に鞄を置いてから私の方を向いた。
「同じクラスで席も隣りとか、どんだけお前俺のこと好きなんだよ」
「はっ?!なんでそうなんの!私が決めたんじゃないし!!!!」
いきなりの意味の分からなすぎる台詞に、私は度肝を抜かれつい大声を出してしまう。
またもやそのせいでみんなの視線は今度はこちらに向き、私は恥ずかしくてもう何もできなかった。
左隣、オオカミ襲来
(やっぱお前等そう言う関係だったのか!)
(銀八うるさい黙れ死ね!)
(がしゃーん!(broken heart!))