晋助が隣りにきてから早3時間。
私、そろそろ限界なんですけど・・・
「ねえ晋助・・・」
「あ?」
今は4限目の数学の授業中。
新学期初日だけど、学校側の都合で4限まで授業がある。
でも今日はもうこれで終わりだから、頭の中は既に勉強モードではなかった。
というか、勉強どころじゃない。
さっきからずっと、晋助の視線を感じる。
怖くて確認することはできないけど、確実に見られている。
でももう限界。冷や汗半端ないし。
「そ、そんな私のこと見てて楽しい・・・?」
「ああ」
「な、なんで?!」
予想外すぎる返事が返ってきて、私は思わず彼の方を向いた。
その顔はやっぱり真っ直ぐ私を見つめていて、口元は笑っている。
「目の保養。でも水玉ってのがなァ・・・」
「は?」
「黒あたりにしとけ、お前結構胸あんだし」
「ばっ・・・!」
晋助の発言に、私は即座に自分の身を抱きしめた。
さっきからこっちを見ていた理由はそれか・・・!
私はさっきまでカーディガンを着ていたけれど、今は休み時間に騒いだせいか暑くてYシャツ一枚でいた。
Yシャツの下にキャミソールなどは着ていないから、どうしても下着がうっすら透けてしまう。
でもそれは周りの女の子にも多いことだったから、別に気にしていなかったけど・・・
なんでこいつは・・・、こうもハッキリ言うんだろうか・・・!!
「今更隠しても、なァ?」
「な、なんでそんな所ばっか見てんの、授業受けなよ!」
「お前が見せてきたんだろ」
「見せてない!」
私は急いで自分の腰に巻いていたカーディガンを解き、袖を通した。
これ以上あの視線を向けられるのは嫌だし、何よりも恥ずかしい。
着終わったあと晋助を睨んでやると、「おー怖」と笑ってきた。
これからは迂闊にカーディガンも脱げないのかと思うと、自然と溜息が出た。
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「じゃ、私は保健室行くから、トシ達は先帰ってて!」
「おお、大丈夫かよ一人で」
「ま、なら襲われることはまず有り得ないんで大丈夫だろィ」
「総悟あんた・・・!」
HRも終わり私達は鞄を持ちながら机の周りで話していた。
トシも総悟も私と同じ寮に住んでいるから、帰りは大体一緒に帰っていた。
「てか、俺たちゃァ今日からまた部活なんでねィ」
「あ、そっか。じゃあまた暫く一緒には帰れないんだね」
「ま、つまりまだ学校にいるから、なんかあったら連絡よこせよ」
「何かっこつけてんでさァ、土方コノヤロー」
トシと総悟は剣道部に所属している。
しかも二人とも県大会は楽々行ってしまう程の実力。
その上他のスポーツも大体はできてしまうから、よく助っ人とかもやってたり。
「うん、わかった。じゃ、取り敢えず行ってくるわー」
「おう、また寮でな」
「もしも脱処女したらお祝いしてあげますぜ!」
「ばっ、馬鹿!べ、別に襲われに行くんじゃないから!変なこというな総悟!」
教室内で大声でそう言った総悟を睨み付けながら私はそそくさと教室を出た。
なんだか今日一日でクラスに居辛くなった気がする。
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この学校は3つの校舎からなっていて、
1、2棟に全学年の教室があって、3棟に職員室や保健室、音楽室などがある。
まあいくつか例外はあるけれど、大体そんな感じ。
その3棟1階の端に保健室がある。
私は保健室の前まで来ると、電気がついているのを確認した。
「あれ?」
電気はついているものの、ドアのガラスには「不在」という札がかけられていた。
普通不在なら電気消していくよね?
でもあの人ならわすれるか、も・・・。
てか人を呼んでおいていないとかなんなの。
「・・・ま、呼んだんだからいなくてもすぐ帰ってくるか」
私はそう思い、中で待っていようとドアを開けた。
そして人の気配に気付く。
「ん、んぁ、・・ゃ、せんせ」
思わず口を開けてしまった。
「テメェから誘ってきたんだろうが」
この声は確実あの人の声だろう。
ちょ、何してんの、まじで。
私は出て行った方がいいんだろうけど、自分は呼び出された身だし、
なにより好奇心で、その声が聞こえる方へ近付いた。
声の場所は予想通りベッドで、そこはカーテンで隠されている。
でもベッドが軋む音は聞こえるし、女の子の喘ぐ声も段々と大きくなっている。
私はどうするべきか・・・
と考えていたつもりなのに、私はいつの間にかカーテンの閉まるベッドの前まで行き、
シャーーーーーッとカーテンを開いていた。
「あの、それ後にしてもらえません?」
「きゃっ、何この子?!」
「え、あ、急にごめんなさ・・「私帰ります!」
「ぅあっ」
ベッドの上で喘いでいた女の子は私を見ると顔を真っ赤に染め、
急いで脱ぎ散らかした服を持ち、私を押しのけて出て行ってしまった。
私はその衝撃で隣りにあったベッドに倒れ込む。
そんな急いで出て行かなくてもいいのに!
私の用が済んだらいくらでも続きしてくれてかまわないし!
私がそう思いながら起き上がろうとすると、不意に下半身に重みを感じる。
「・・・・お前、責任取れよ?」
視線を下半身に移すと、そこにはYシャツのボタンを全部開けて、ニヤついているあの人。
私の足はその人の両手でがっしりと捕まってしまっていた。
「た、高杉先生・・・でしたっけ?」
「なんだよ、名前も覚えてねェのかは」
「なななななんで呼び捨て?!」
「なんでって、別にいいだろ」
高杉先生はそういうと私に覆い被さってきて、正面に見つめ合う形となった。
しかも距離が近くて、先生の髪が私の頬を撫でる。
「か、顔近いんですけど!」
「お前以外と睫毛長いな」
「ちょ、言葉のキャッチボールできてない?!」
このままじゃ本当に襲われる!総悟に祝ってもらえちゃう!
と思いながらも、あまりにも気が動転し過ぎて身体が思うように動かず、私が何も抵抗しないでいると、
先生の左手が私の右胸の上に乗り、やんわりと揉んできた。
「お前、胸でか」
プチンッ―・・・
そう言われた瞬間、私の中で何かが切れ、
次の瞬間私は先生を跳ね飛ばし、手を上げていた
パシンッ!
「気安く触んなこのクソ野郎ーッ!!!!!」
私はそう叫ぶと、自分の鞄を持って、一目瞭然に保健室から逃げ出した
高杉先生は元いたベッドに尻餅をつき、叩かれた頬を手で押さえたのは見たけど、それからはわからない。
保健室、オオカミ襲来
(あの女、)
(俺に手を上げるたァ…)
(ますます気に入った)