「た、ただいまあ〜・・・」
そういって寮の玄関に倒れ込んだのもつかの間、
後ろから私は頭をこれでもかと言うくらい強い力で掴まれる。
見たら死ぬと思いながらも、ギリギリと段々強められていく力に耐えきれずゆっくり後ろを向いた。
「ぉ、おかえり、晋助・・・」
「おい、覚悟はできてんだろうなァ、」
「え、ちょ、痛っ!痛いです晋助さん!割れちゃいます!」
晋助はまるで悪魔のような笑みで私を見下して、まだ力を緩めてはくれなかった。
私が必死に頭から手を離そうと晋助の手と格闘していると、
奥の方からパタパタとスリッパを鳴らす音が近付いてきた。
「なんだいなんだいうるさいねえ!」
「ぉ、おばちゃん助け・・・」
「あ、君今日からこの寮に入る高杉くん?待ってたわよ〜!」
「ちょ、おばちゃ・・・」
その足音は、寮の大家さんであり、私達の身の回り世話をしてくれているおばちゃんで
玄関まで眉を顰めながら来たものの、晋助を見た瞬間顔が笑顔に変わった。
私には一切目もくれずに・・・!!え、気付いてないとかないよね?ね?
でもおばちゃんが来てくれたお陰で、私は晋助の暴力から解放されることができた。
晋助は私の頭から手を離し・・・まるで私がいないかのようにおばちゃんに挨拶をする。
「今日からお世話になります、高杉です」
「あらまー、随分な二枚目さんねー!」
「ちょ、おばちゃん!ただいま!」
「うるさいわね!さっさと部屋行きなさいな」
やっぱりさっきから気付いてたのか・・・!無視するとか酷いよおばちゃん!!
私がそう思いながら項垂れていると、晋助は横目でそれを見てフフンと鼻で笑った。
「えっと、大家さん・・・」
「そんな白々しい!おばちゃんかみつ子と呼んで!」
「じゃ、じゃァ・・・おばちゃん・・・」
「あら、みつ子じゃないのね!」
ちょ、いつもとキャラ違うんだけど!どうしちゃったのおばちゃん!
まさか晋助の毒牙に・・・?!その姿を見ただけで?!
っと思ってしまうくらい、おばちゃんが気持ち悪い。
なんだか目がキラキラしてるし、頬染めてるし。
これ以上此処にいたらおばちゃんのイメージがズタボロになりそうなので私は部屋に戻ろうと立ち上がろうとした、が。
立つ前にいきなりYシャツの後ろ襟の晋助に強く掴まれた。
例えるとすれば、猫が首根っこを飼い主に持たれてる感じ。
「ぐえっ」
「おばちゃん、俺の部屋とこいつの部屋教えてくれ」
「あーん、もう行っちゃうの?晋助くんの部屋はこの廊下の一番奥。はその隣よ」
「ふーん・・・?わかりました」
え・・・・・・?おばちゃん、今なんと・・・?!
今・・・ちょ、え、嘘。い、今、隣って、聞こえたんだけど・・・!?
私は自分の血が引けていくのを感じながら恐る恐る晋助の顔を見上げてみると、
私とは真逆でニヤリと楽しそうな笑みを浮かべていた。
「じゃ、行こうぜ、」
「ぁ・・・私コンビニにジャンプ買いに行かなきゃ・・・」
「んなの後でいいじゃねえかよ。俺を案内しろ。俺の部屋とお前の部屋を」
「ちょ、なんで私の部屋まで・・・ぐええっ」
晋助は自分の鞄と私の鞄を持つと、私を引きずりながらおばちゃんに言われた廊下を歩き始めた。
おばちゃんは私達の背を見送りながら「夕飯は18時半よー」とヒラヒラと小さく手を振る。
私はなんとか首が絞まらないように襟の隙間に指を入れ、されるがまま部屋まで引きずられた。
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「こ、ここが晋助の部屋」
「ふーん、じゃ、お前の部屋はこっちか・・・」
「ちょ!ちょっと待った!!」
部屋の前に着くと、晋助は真っ先に私の部屋の取っ手を掴んだ。
私は慌てて自分の部屋のドアをかばうように晋助の前に立ちはだかる。
「晋助の部屋は隣だってば!」
「んなの一度言われりゃわかる」
しらっとそういった晋助は私を力ずくで退かし、ドアを開いてしまった。
私は再び止めようとしたけど、もう時既に遅く、晋助はズカズカと中へ入っていった。
「ここがの部屋か」
「お、お願いだからあんま見ないで、汚いから・・・」
「すげーお前の匂いがする」
「へ・・・っ、変態ぃいい!!」
晋助の発言に私が鳥肌を立てると、
気が済んだのか晋助はあっさりと部屋から出て行った。
一体何のために入ったのだろうか・・・。
「おい」
「え?」
「今度から下着ぐらい箪笥にしまっとけよ」
「ま、お前がいいなら俺は構わねェけど」と晋助は口角を上げながら言うと、
早々と自分の部屋に入っていってしまった。
「し、しくじった・・・!!」
ま、まさかそういうことが狙いで・・・?!?!?!
私はなんとも言えない恥ずかしさに、両手で顔を覆いその場にしゃがみ込んだ。
今度からは全部ちゃんとしまおう、と心に誓った瞬間だった。
Dangerous Life!!
(あーあ、)
(これから大丈夫なんだろうか、自分)
(…・・・ま、とりあえずお風呂はいるかなー)
主人公達が住む寮の見取り図 1 2