あれから、10年が経った
あたしももう、社会人になる
そして冬獅郎も・・・
She smiled at him.
「ねえ、アンタいい加減に彼氏つくった方がよくない?」
あたしは無事大学まで進学を終え、
今は東京に上京し、ある雑誌の出版社で働いている
現在お昼休み中、
職場で仲良くなった由江とレストランに来ていた
「うーうん、いらない」
「でもアンタ、付き合ったことないんでしょ?」
「うん。まあ・・・多分?」
あたしと冬獅郎は両思いになったものの、
その日に冬獅郎はアメリカに行ってしまったので、
現在の冬獅郎との関係がよくわからなかった
冬獅郎の事を、彼氏と言ってもいいのだろうか
「何その微妙な返事・・・;;」
「あたし、心に決めた人がいるの。前にも話したでしょう?」
「あー、冬・・獅郎くん・・・だっけ?」
「うん」
由江には、数回冬獅郎の話をした
まあ、あたしがまだ一回も彼氏ができたことがないと話したら
無理にでも誰かと付き合わせようとしたから話したんだけど・・・
「でもさ、もう10年ぐらい経つわけでしょー?きっとその冬獅郎くんだって一回ぐらい彼女できてるって」
「そんなことないよ。冬獅郎は約束破らないもの」
「確信はないでしょー?それに頭も良くてカッコいいなら尚更・・・」
「あんま・・・嫌なこと言わないでよぅ・・・」
「あー・・・;ごめん、言い過ぎた」
流石にそこまで言われると、あたしも本当は自信がないから涙が出てくる
だって、本当はとっても不安だもの
冬獅郎はカッコいいし、頭も良い
アメリカでだって、絶対モテる筈だ
そりゃああたしだって、冬獅郎と離れてから何回か告白された事はあるけど・・・
「まあ、がいいって言うならいいけどね・・・、良かったら良い人紹介するよ?」
「ありがとね由江、でもやっぱりあたしは冬獅郎が好きなの」
あたしはホットコーヒーのカップに口を付けながらゆっくりと言った
「・・・そう。あーぁ、私も見てみたいもんだわ、その冬獅郎くんを」
「はは、もし帰ってきたら由江に紹介するね」
「うん、宜しく。ついでに冬獅郎くんのカッコいい男友達も」
「由江彼氏いるじゃん」
それからはいつも通り他愛無い会話をし、
会計を済ませてレストランを出た
「じゃ、あたしこれから取材行かなきゃ」
「そかー、じゃあ私は戻るね」
あたしは2時から取材があったので、由江とはレストラン前で別れを告げようとしていた
その時・・・
「・・・・ッ!!」
後ろから名前を誰かに呼ばれた
その声は、とても懐かしい
「!」
あたしは段々と大きくなる声に小さな期待を持ちながら、
ゆっくりと振り返った
「・・・やっと、見つけた」
「とぅ・・・しろ・・・?」
目の前には・・・、何度この日が来るのを望んだであろう
黒いスーツを着こなした、冬獅郎
かっこよ過ぎて、直視できない
「お前っ・・・、東京出て来たならそう言えよ・・・;」
「・・・・んなの、連絡先知らなかったもんっ」
「そう、だったな」
あたしの隣にいる由江は冬獅郎を見たまま固まっていた
「いつ、日本に戻ってきたの?」
「昨日だよ、んでお前の家行って、東京にいるっておばさんに聞いた」
冬獅郎は走ったせいで頬は少し赤く染まり、
締めていたネクタイを緩めた
「そっか・・・、お疲れ」
「おう、それにしても・・・」
冬獅郎はそこまでいうと一息つき
ニヤッと意地悪い笑みを浮かべた
「、全然変わってねぇな」
「ぇっ、嘘!?」
自分としては、結構変わっていたつもりだから、ちょっとショック
そりゃあ大人っぽくはないかもしれないけど・・・
冬獅郎はとってもかっこよくなってるのに・・・
あたし、似合わない、かな・・・?
「嘘」
「ぇ・・・・?」
「だから嘘だって、かなり変わった」
最初後姿だけじゃわかんなかった、と冬獅郎は笑いながらいった
「、綺麗になったな」
「冬獅郎だって・・・とってもかっこよくなったよ。かっこよ過ぎて直視できない」
「はは、何言ってんだ」
一気に、体温が上がるのがわかった
きっと今、あたしは耳まで真っ赤だろう
「お前、顔赤い」
「うるさいな//冬獅郎がいけないんだから」
「あー悪かったな」
冬獅郎は全然悪いと思っていないんだろうな
顔が笑ってる
「ところで、ちゃんと覚えてるだろうな・・・?」
「・・・うん、ずっと待ってたんだから」
「そうか、良かった」
冬獅郎はそう言うと、小さく溜め息を吐いて
あたしの肩を掴むと少し強引に口付けた
「約束した通り、迎えにきたぜ」
「うん、冬獅郎、大好き」
あたしは冬獅郎の唇に触れるだけのキスをして
冬獅郎と離れてから、いや、今までで一番の笑顔を見せた
---END---
さよならは言わない、のその後です。
ヒロイン、迎えにきてくれてよかったね。