連れてこられたのは、壁から床、ベッドまで赤で統一された部屋

ベッドは凄く大きくて、丸くて・・・もしかしてこれは噂の回るベッド!?とか、考えている暇はない。

ベッドの前まで連れてこられると、いきなり押されベッドに尻餅をついた

見上げると一向に変わらない冷たい視線。

何か喋らなきゃいけない気がするけれど、何を喋って良いかはわからなくて、私は顔を逸らした。






「おい」






ギシ、とベッドのスプリングが軋む音がすると思えば、

高杉くんが私の正面から横に移動してベッドに腰を下ろしていた。

今までになく近くで視線が絡む。






「さっき言ってたこと、本当なのかよ」



「え、」



「好きだって言ったろ、俺のこと」






高杉くんの息がかかりそうなくらい顔を近づけられて、

私は恥ずかしくなって少し身を引いて俯いた

それから静かに頷いてみせる。それを聞くために二人きりになったのか。

高杉くんは離れたのが気にくわないのか眉を顰めて再び近寄ってきた。





「なんで逃げるんだよ」


「いや、だって、恥ずかしいから・・・」


「俺のこと好きなんだろ、こっち見ろよ」





ぐい、と顎を掴まれ半ば強制的に視線を合わせられる。

高杉くんは真っ直ぐに私を見てきて、息ができなくなりそうだった

でも、さっきとは違う。

さっきまで冷たく深く闇みたいだった瞳に、今は不安の色が揺らいでいた。

その瞳を見た瞬間、私は抱きしめたいという衝動に駆られる。






「好き、高杉くんのこと」


「証明できるものは」


「証明?」


「言葉なんか信じられっかよ」






高杉くんは拗ねたようにそういうと、何か閃いたようにニヤリと口角をあげた






「お前から、キスしろよ」



「え、え、え!?そんな急に・・・!?」







いきなりの注文に私は驚いて目を丸くした

でも高杉くんは本気みたいで、何も言わず目を瞑った

ドキドキと高鳴る鼓動が聞こえそうで、隠す様に胸に手を置き深呼吸をする

こうなったら覚悟を決めるしかない。

別に好きなんだからキスするのはいいんだけれど、

過去に1度しかしてないし、何より、私からと言うのが凄く恥ずかしい。




私は小さく深呼吸をしてから高杉くんの両肩に手を置き、顔を近づけ目を閉じた






「ぜ、絶対目、開けちゃだめだよ」


「わかってる、早くしろよ」






そういって高杉くんは、私の腰を抱きしめ、

そのせいでより一層距離が近くなる。




高杉くんの、微かな吐息が私の鼻を掠めた

私は決意を固め、ゆっくりと近づき、口づけをした。






















ちゅ、
























触れるだけの優しいキス。

でも今の私にはこれが精一杯で、自分では満点をあげたいほどの頑張り。

しかし、そっと唇を離し、目を開けよとした瞬間、

いきなり後頭部を押さえつけられ、再び高杉くんと唇が重なった。







「んぅ、」







高杉くんは私の後頭部を離そうとせず、角度を変えて何度もキスをする

そして、とうとう押し倒され私と高杉くんはベッドに沈んだ



長い間口付けしていれば呼吸が苦しくなってくるのは当たり前で、

私は強めに高杉くんの胸を押し、少し口を開いた。

呼吸ができた、と思うのもつかの間、今度は私の口内に舌を進入してきて、舌を絡ませられる。




それが何分続いたのかは、最早私にはわからない。


















「キスってのはこうやってすんだよ」








やっと離されると、高杉くんは潤う唇を一舐めしそう呟いた

流石の高杉くんも少し息が上がっている。

私はもうくたくたで、キスだけなのに凄く身体が重く感じ、ただただベッドに身を委ねた。







「私には、そういうキスは無理そう」


「俺が仕込んでやりゃァいいんだろ、簡単なことだ」


「じゃあ多分できるようになるのは私がおばあちゃんになったらだね」


「んなババァにキスされたって嬉しかねェ」


「その時は高杉くんもおじいちゃんだから大丈夫だよ」








なんて、私が言ったら、「俺は老後もモテんだよ」と高杉くんは鼻で笑いながら言った

なんか、この部屋に入ってから、少しずつ前みたいに戻れてる気がしてとても嬉しい。

こんなに幸せで、楽しかっただなんて、ちょっと前の私は知らない。

それを考えると、この件があって良かったと思う。けして口外できないけど。













私、本当に高杉くんのことをいつの間にか好きになってたんだな。








































黒猫の囁きを
(ねえ、高杉くん)
(・・・あ?)
(私、本当に本当に、高杉くんのこと好きになったみたい)
(みたいってなんだよ、自分の気持ちだろ)
(だって、人を好きになるの初めてだから・・・)