これで思い出はすべて消える
Believe
・・・これで全部だよね
はすべてのダンボール箱を外に出した
これで本当に思い出を思い出させるものはなくなる
本当に、これでいいんだよね・・・?
私間違えてないよね?
「ねぇ、冬獅郎?」
はそっと呟いた
ううん、間違えてなんかない
これで冬獅郎と正直に話せるんだもの
過去より今を選ばなきゃ
「ご飯食べてからやろう」
ご飯食べて、お風呂入ってから、夜遅くに燃やし始めよう
はダンボールの置いてある場所から離れた
今日、あいつの部屋へ行く
どんな顔をするのだろうか
嫌な顔はしないだろうか
日番谷は書類を仕上げながら考えた
そういえば、松本はなんで俺に頼んだんだろう
あいつ本人が行けばいい事じゃないのか?
俺が行かないと駄目な理由でもあるんだろうか
まあ、とにかく行ってみれば分かるな
さっさと仕事を片付けよう
そう言って、日番谷は書類に目を落とした
もう8時・・・そろそろあいつの部屋に向かうか
日番谷は椅子から立ち上がり帰り支度を済ませ
の部屋へ向かった
行ったら何を話そう
まずは謝らなくっちゃな
“今まで避けててごめん”って
それから俺の気持ちをちゃんと伝えて
お前の事が心配だ、と
それから過去の事を聞こう
過去、二人はどうだったのか
何処へ行って何をしたのかと
そうすれば何か思い出せるかもしれない
俺の過去の記憶
日番谷の歩くスピードが上がった
「そろそろいいかな」
食事、入浴を済ませたは部屋のドアを開け外の様子を覗った
おし、平気みたいだ
は部屋を出るとダンボールを置いている所へ向かった
この写真、全部燃やすのに何時間かかるかな
夜は長いから、ゆっくり一枚ずつ燃やしていこう
はしゃがみ、予め用意していたマッチと新聞紙を出した
シュッ・・・
マッチに火をつけると、そのマッチを新聞紙の中へ入れ燃やし始めた
そしてダンボールを開け、何冊かのアルバムを取り出した
「まずはこれから」
は火の中にアルバムを投げ込んだ
「おい、そこの奴そこで何してやがる!!」
がアルバムを火の中に入れた瞬間
後ろから聞き覚えのある人物の声が聞こえた
「冬獅郎?」
なんで冬獅郎が此処に!?
「?お前、そこで何して・・・」
火?
日番谷は火の中との手にしている物を見た
アルバム!?
あいつなんでアルバムなんか燃やしてんだ
「おい、今すぐ火消せ」
日番谷はの方へ走った
「え?」
あのアルバムん中に過去の写真があるんだろ
あれ燃やされちまったら記憶を足り戻すには不便すぎる
「っ消せって言ってんだよ!!」
日番谷はのいる所まで着くと、中で燃やされていたアルバムを外に蹴り出した
「冬獅郎!?」
何で折角燃やしてたのに取りだ出しちゃうの?
それに今のやり方じゃ冬獅郎火傷しちゃう
「冬獅郎平・・・」
「さっさと火を消せ」
日番谷は眉間に皺を寄せを睨んだ
「う、うん」
冬獅郎が怒ってる
どうして・・・
はそう思いながら用意してあった水を火にかけた
「アルバム、完全には燃えてなかったみたいだな」
火を消し終わると日番谷は火の中に入っていたアルバムを開き始めた
やっぱり
前の俺とこいつの写真ばっかだ
なんでこんな事・・・
「おい、これどういう事だよ」
「えっと・・・;」
ばれてしまった
アルバムを燃やそうとしていた事
「昔の思い出を無しにしようと思って」
もう何も隠したって意味がないからはっきり言おう
「なんでそんな事・・・」
日番谷はアルバムを見ながら言った
「私がもう昔を思い出さないで、今の冬獅郎と一緒にいる為」
「え?」
俺と一緒にいる為?
「冬獅郎の気持ちが動いているのがわかったから、私もちゃんとしようと思ったの」
乱菊さんも心配しているし
「でも冬獅郎は記憶がないから、きっと私は挫けてしまう時があると思って」
だから・・・
「そんな時にこんな昔の写真見たらもう立ち上がれなくなっちゃう」
もう立ち直れなくなってしまう
そこで私のすべてが今度こそ崩れてしまう
そんな事にしたくないから
「だから昔の写真を全部燃やしてしまおうと思ったの」
の頬を一筋の涙が流れた
「・・・」
こいつはこんなにも考えていてくれた
俺は?俺の気持ちは?
に伝えなければ
「おい」
「な、なに?」
まずは
「今までの事避けててすまなかった」
それから
「俺、今は本気で記憶を取り戻したいと思ってる」
だからよ
「俺にの力を貸してくれ」
そうすれば、もうお前の辛い顔見なくて済むだろう?
「ぅ・・・うん」
の目からは、また一つ、また一つと涙が流れていった
「泣くなよ」
「だってっ、嬉しいんだもん」
冬獅郎からそんな言葉が聞けるなんて思っていなかったから
「そんでよ、このアルバムもう燃やしたりすんなよな」
「なんで?」
「今日じゃないけど、俺お前の部屋にこの写真見に行くから」
写真を全部見たい
「うん、わかった」
大事にしまっておくよ
きっと冬獅郎は本気で記憶を取り戻そうと思っているから
この写真できっかけを探そうとしているんだと思う
そういう事なら私は喜んで力を貸そう
冬獅郎のその気持ちが消えない限り
私はこのアルバムを燃やしたりしない
---END---
とうとう10話目!!