俺とは暫く歩き





いつの間にか店のない静かな野原に来ていた


























Believe

























「ねぇ、冬獅郎、まだ歩くの?」










はそう言って日番谷の服の裾を掴んだ





「いや、もういい」





どうしても話しづらくて歩き続けていたら


もう店なんて辺りに一つもなくなっていた





「話してくれる?」





さっきから、は歩きながらも


俺に何回もその事を聞いてきた















別に、言いたくない訳じゃない





なんか照れくさくて





こんな事思ってる自分が恥ずかしくて





中々言い出せないだけなんだ















「あぁ」





でもその照れくささ、恥ずかしさが


の不安になる事もわかってる


はすぐに不安がるから





いや、俺がそうしてしまったのか





日番谷は野原の真ん中に立つと


行き成り座り込みにも座るように手で支持した





もそれに素直に従い


日番谷の隣に腰を下ろすと自分の髪を梳いた










「あのな」










日番谷が言い出すとは髪を梳くのを止め


耳を傾ける





「別に、が怒るような、不安がるような事じゃねぇんだよ」










ただ俺が

























「なんか寂しかったんだ」

























「ぇ?」





「さっき見せに入って行く時、手が離れただろ?」





「うん」





こんな事、柄じゃないのは分かってる


顔が熱い


きっと今俺は真っ赤になっているのだろう










「その瞬間、が何処かに行ってしまう気がして」










「私、冬獅郎を残して何処かに行ったりしないよ?」



「そう言う意味じゃないんだ」



「意味が、意味が分からないんだけど;」





は耳の後ろを掻きながら小首を傾げた










は、もし俺の記憶が戻ったら嬉しいだろ?」










「そりゃあ、うん」





そんなの嬉しいに決まってる


私はずっとそれを願ってきたんだから





































「でも記憶が戻ったら、今こうしている記憶は、なくならないと思うか?」




































つまり記憶をなくしてからの記憶




































「正直、もう記憶は戻らなくてもいいと思ってるんだ」















「・・・・」















「今幸せだし、勿論前の記憶がない事で不便な事もあるけど」















俺は今のこの状態で満足なんだよ





「なぁ、



「・・・・でも」



「?」





は日番谷の手を握った










「なくならない可能性だってあるんでしょ?」










なくなってしまう可能性はあるとしても


なくならない可能性だって同じくらいあると思う





「なら、なくならない可能性を信じれば良い」





私は少なくともそう信じてるよ





「・・・・」



「でも、無理に、強引に何かして思い出さなくて良いよ」





そんな事してもきっと思い出せないだろうし





は顔を上げ日番谷に笑顔を向ける















「ゆっくり行こう」















「・・・、あぁ、そうだな」















こいつは、俺より何倍も強いな


俺も、見習わなくちゃいけねぇ










日番谷もに照れくさそうに笑うと


ふと懐に入れっぱなしの物に気付き


それを取り出した





「何それ?」



「さっきの店で買ったんだ」





一目惚れってやつだろうか


見た瞬間にお前に似合う、と思って





日番谷はに小さな袋を手渡した





「開けていい?」



「あぁ」





日番谷が頷くとは袋の口に手を掛け


ゆっくりと中を覗いた




















「髪・・・飾り?」




















は袋の中から椿をモチーフにした髪飾りを取り出す





「買うの恥ずかしかったんだぜ?//」





でもどうしてもお前にあげたくて


恥ずかしさも我慢して買った





「ありがと、冬獅郎//」



「貸せよ」





付けてやる





は日番谷に髪飾りを渡すと


後ろを向けと言われ、素直に従う





すると、ゆっくりと髪を梳かれ


髪を持ち上げられると


髪飾りが髪に触るのが分かった





「ん、できた」



「・・・ど、どうかな?似合う?」










「あぁ、似合う、綺麗だ」










日番谷はそう言うとそのままを抱きしめた





「な、何冬獅郎!?//」



「他の奴になんか見せなくねぇな」



「/////」





はその言葉に耳まで真っ赤に染める




少し抱き合っていると日番谷が急に力を抜き立ち上がった





「そろそろ日が暮れてきた、家に帰ろうぜ?」



「うん、そうだね、夕飯作らなきゃ」





日番谷はに手を差し伸ばし


はそれに掴まり立ち上がる










「夕飯何にしよっか?」



の作ったもんなら何でも食うぜ?」



「じゃー、適当にあるもので」





なんだよそれ、と日番谷に小突かれると


は嬉しそうに笑い


それにつられて日番谷も笑いを溢した



















---END---

なんか平和だなァ、オイ。

ついでにいいますと、ヒロインの貰った髪飾りの椿の種類は

ヤブツバキか乙女椿で。