「イヅル!いつまでもウジウジしないの、男の子でしょ!」
そういって荒々しく頭を撫でる先輩のことが大好きでした
「ちょ、せんぱ・・・っ」
「あたしがいなくなるからってまた苛められるんじゃないよ?イヅルすぐ苛めの対象になるんだから」
いつもいつも僕を心配してくれて、
何かあったらすぐ飛んで来てくれる先輩が、大好きでした
「ちゃんと自分の意見は言いなさいよね、イヅル」
でも僕はいつも守られてばかりのくせに、
いつのまにか先輩を守りたいと思ってました
「わかってます、よ・・・先輩」
なのに、
「そ・・っか、なら、あたしも安心できるよ」
どうして、今僕の前にいる先輩は真っ赤なのだろう
「元気でね、イヅル」
また何処かで。
そう言い残して先輩は静かに目を閉じた
春風うらら
(まだ吹き始めたばかりの春風が)
(優しく僕と先輩を包み込んだ)
(先輩の真っ赤な血は少しずつ乾いていくのに)
(僕の頬から流れる涙は一向に乾かない)