「ちょ、と、冬獅郎!待ってよう!!」
「おせーんだよ、早く来い」
冬獅郎は一人坂の上で私を見下ろした
自転車を押して坂を上る私の額にはほんのり汗が滲んでいる
「仕方ないじゃん!こっちは自転車押してるんだから!」
「んなのじゃんけんでお前が負けるのが悪いんだろうが」
「うっ・・・」
私はやっと坂を上りきると、大きく息を吸い込んだ
「おい、さっさと後ろ乗れ」
「ちょ、待ってよ〜!!」
「俺はさっさと帰りたいんだよ」
「も〜」
私が一息ついている間に、冬獅郎は自転車に跨って進もうとしていた
「あーもう、はーい、乗ったよ」
「ま、いつかは自転車じゃなくて車になるだろ」
「え?それどういうこと?」
「お前馬鹿か?」
「何それ!」
もう少し大人になれば
(俺の言った意味もわかるんじゃねぇか?)
(いや無理だから!)
(じゃあ、もっと簡単に言ってやるよ)
(えー?)
(あと何年後か経ったら指輪買ってやるよ!)