8月8日、今日も私達は木の下で待ち合わせをした。

今日はどこも思い浮かばなかったから、取り敢えず木の下で二人並んで座って、

持ってきていたお菓子を広げて、私は夏休みの宿題、晋助は私の持ってきた漫画を読んでいた。




「あー、もう。わーかーらーなーいーー!」


「またかよ、ほら、貸せ」




私が頭をガシガシと掻きながらそう叫ぶと、

晋助は呆れたように私がやっていた宿題のワークを奪い眺める。




「・・・・・・、かなり馬鹿だろ」


「えっ、そうなの?!やっぱり?!」


「いいか、これは・・・」




晋助は私にワークを見せると、私のわからなかった問題を指さし一つ一つ解き方を教えてくれた。

すると、何故か言っていることが全てわかり、私の行き詰まっていたところもすんなりと解けるようになってしまった。




「あ、だからここが3Xになるのね」


「そう、簡単だろうが」


「初めてわかった!って思えた!晋助凄い!!」


「どんだけなんだよお前・・・」




私が続きを解こうとすると、近くに置いてあった携帯が鳴った。

手に取りサブ画面を見ると、銀ちゃんからのEメールで、取り敢えず開いてみる。




「おおお!!」


「あ?んだよ」


「銀ちゃん達が夕方からバーベキューするから、こいって!」




メールの文章を晋助に見せると、晋助はその内容を自分でも読んだ。

そして「ふーん」といい携帯から視線を離す。




「肉買ってこいって・・・、パシリじゃねェか」


「まあまあ、いいじゃん、行こうよ折角だし!」


「・・・ま、いいけど」




私は急いで広がっていた宿題を片付けて、お菓子は近くにいた鳥たちにあげた。

晋助も漫画を閉じて私の自転車の籠に戻し、なぜか自転車に跨った。

私はバックを籠に入れ、晋助の顔をじっと見つめる。




「・・・・・・早く乗れよ」


「え、なんで?スーパーの場所・・・」


「お前が後ろ乗って指示出せばいいだろうが」




「もう後ろなんかに乗りたくねーんだよ」と晋助は荒々しく言うと、

私の腕を掴んで、荷台の方に引っ張った。

仕方なく私はタオルが巻かれている荷台に跨ぎ、晋助のお腹辺りに手を置いた。



「もー恥ずかしがり屋だなあ晋助は」


「ちっ、勝手に言ってろ」




そして私達は昨日同様、また太陽の下を走り出した。




























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「次のとこを右!んで左いってもう一回左で右で・・・」


「いっぺんに言うんじゃねェよ!」




田圃道を走る私達は、何処まで行っても同じような景色を眺めながら進んでいた。

昨日の道を走っているせいか、晋助の運転はだいぶ落ち着いていて、

後ろに乗っている私はなんだか暇で眠くなってきてしまう。

だからちょっと適当に言ってみたら、怒られてしまった。


時々すれ違う知り合いのおじさんおばさんには声を掛けられたり、ニヤニヤされたり、

バーベキューをすると話したら野菜をくれる人もいた。




「スーパー行く前に荷物いっぱいになりそうだよねー」


「お前がなんでもかんでももらうからだろ」


「でもどれもこれもバーベキューの材料だもん」




ピーマンにナスにとおもろこし。それにおっきなスイカ。

これは川で冷やして、バーベキューのあとにみんなでスイカ割りかなあ。

だったら明るい方がいいからバーベキューの前かな。


そんなことを考えていたら、曲がる所まで着て、

私は「右ねー」とだけ言って晋助のお腹に掴まりなおした。

そして右に曲がると、遠目に小さいスーパーが見えてくる。




「おい、あれじゃないのかよ」


「ん?あれだよ?」


「お前さっきすげーごちゃごちゃ言ってただろ」


「あー・・・あれは、うん、あれ」


「ったく」




晋助は自分のお腹にある私の手を横目で見ると、

そっとハンドルから片手を離し、その私の手を引っぱたいた。




「痛っ!」


「仕置き」




ニヤリ、と笑ってそういう晋助は、再びハンドルに手を戻した。

私は赤くなってないかを確認して、数回手を振ってからまた元あった場所に戻した。

そんな赤くはなっていなかったけど、結構痛かった。容赦ないなー!




少しして、キキッとブレーキがかかり、私達はスーパーに辿り着く。

私は野菜を持ちながら自転車を降りて晋助を待ち、自転車を止めるとそこに野菜を下ろした。




「置いてくのか?」


「うん、中に持ち込んだら変だし。誰も持って行かないよ」




そう言って置き終わると、私達はスーパーの中に入った。

スーパーの中はガンガンに冷房が利いていて、私は小さく身震いをした。

こういうところ入ると外に出たとき余計に暑いんだよなぁ、と考えていると、

晋助はカゴを持ってすたすたとどんどん奥へ進んで行っていた。

それに慌てて私は後を追う。





「どんくらい必要なんだ?」


「んー5人だから、沢山!」


「具体的に言えよ」


「わからないよー、数学苦手だし」


「・・・・・・じゃ」




晋助は肉売り場まで着くと、目に入った肉を次々とカゴに入れていった。

豚肉、牛肉、鶏肉、ウインナーなどが次々とカゴに放られ、カゴを埋めていく。

数分後にはカゴの中がいっぱいになっていて、私は目を疑った。





「こ、こんなに食べれるかなぁ」


「どうにかなんだろ、男4人いるし」


「お、お金も・・・」


「今は俺が持つ。んで後で銀時」





そう言って晋助は次に魚介類売り場にも足を運び、

頼まれてはいないのにホタテやらエビをカゴに入れた。

美味しそうだから私はいいけど、銀ちゃんは財布の中大丈夫だろうか。



もう本当にカゴの中はいっぱいで、時々崩れそうになるくらいだった。

私達はレジに向かうことにし歩いていると、私の視界にあるものが映った。





「あ!」


「なんだよ、買い忘れか?」


「ううん、あのさ、あれ、買わない?」





私は商品の所まで小走りで行き、指をさして晋助に示した。

それをみた晋助は「別に、いいんじゃね」とだけ言ってまた歩き出す。

指をさしたのは大きな手持ち花火のセットで、私は急いでそれを持ち晋助を追いかけた。




レジに行くと店員さんがあまりの量に驚いた顔をしたのは、言うまでもない。



























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「お〜い!」


「お、たち来たかー!」




私達が昨日の川に行くと、もう既に3人はいて、色々と準備をしていた。

トシはテーブルをつくったり、総悟は食材を切ったり、銀ちゃんは鉄板の用意をしたり。

そして鉄板の用意をしていた銀ちゃんが私達に気付き、大きく手を振ってきた。

晋助は昨日と同じ所に自転車を止め、私は「よいしょ」と沢山の荷物を持って自転車を降りる。

来る途中に貰った野菜やスイカに足して、スーパーで買った物、花火があったから此処までくるのは凄く大変だった。

少しでも体勢を崩すと倒れそうになるし、重たくて手は痛いし。


晋助は自転車を端に止め終わると、私の方に来て何も言わず野菜とスイカを私の手から奪い歩き始める。

するといつの間にか作業を中断した銀ちゃんが近くまで来ていて、私の持っていたスーパーの袋を持ってくれた。




、凄い量じゃね?俺こんな頼んだか?」


「野菜とスイカは来る途中にもらったの」


「ふーん、つか、肉多くね?!」


「ああ、それは・・・・・・」




私はちらっと晋助に視線をやると、ニヤリと笑っている晋助と目があった。




「銀時、後でレシート渡すから金返せよ」


「はァ?!これ俺持ちなの?!」


「ったりめーだろうが、お前が呼んだんだろ」


「俺今月のバイト代少ねェーんだけど!!!」




銀ちゃんがそう喚くものの、晋助はニヤニヤしながら無視し歩き続ける、

私はそれを見ても、払いたくはないので黙っているしかなかった。



私達は川縁に着くと荷物を置き、各自また準備に取りかかる。

私はスイカを冷やそうと思い、スイカを持って川の浅瀬にやってきた。

網に入ったスイカをそっと水の中へ入れ、流されないように石で固定する。

それが終わって戻ると、もう殆ど準備はできていたみたいで、4人は砂利の上に腰を下ろしていた。




、花火も買ってきたんですかィ?」


「うん、折角だし!やりたいじゃん!」


「俺達も買ってたんだぜ」


「え?」




私は晋助の隣りに座って4人の会話に入ると、トシは大量にある荷物の方を指さした。

そこには私達が買ってきたのより大きく大量の花火が置かれていた。

少し距離があるからちゃんとはわからないけど、手持ちだけでなく打ち上げもあるみたい。




「わーすご!」


「ったく空気読めよなー土方。が折角買ってきたのに・・・」


「やりてェって言ったのはオメェだろうが総悟!」




総悟はとても小さい声で言ったのに、トシはそれをも拾って大声を上げる。

なんやかんやこの二人仲良いよなぁ。


私はそう思いながら左手にしていた腕時計を眺めた。

時刻はもう17時半を過ぎたくらい。木の下に居たときよりだいぶ時間が経過していた。





「ねえ、もうバーベキュー始めようよ、花火もあるんだし」


「それもそうだな、じゃ、やりますかー」





銀ちゃんはTシャツを肩まで捲り上げながら立ち上がると、

どこから出したのかシンプルなエプロンをして、真っ白なタオルを頭に巻いた。

どうやら銀ちゃんが焼くのを担当してくれるらしい。

私は近くに重なっていた紙皿と割り箸を持って、食べる準備をした。

























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暫くして、バーベキューも順調に進み、次々といろんなものが焼きあがる頃、

晋助がすっと私の所に寄ってきて、箸で私の皿に何かをよそってきた。




「これ食え」


「えー、またピーマン?!もう何回目!」


「銀時の野郎がいらねえって言ってンのに皿に入れてくんだよ」




そう言って置かれた何回目かのピーマンを、私は仕方なく口に運んだ

別にピーマンは嫌いじゃないけど、そろそろ嫌になってくる。

晋助は凄い好き嫌いがあるみたいで、さっきから肉しか食べていない。

その中でもピーマンが一番駄目らしくて、

初め銀ちゃんによそられた時に私の所に持ってきたのを銀ちゃんは見ていたらしく

それから嫌がらせのように、焼けると晋助の皿に入れてくるらしい。



多分大量の肉の仕返しなんだろうなあ。

そのとばっちりが私にきて凄く迷惑だけど。




「晋助もさ、少しぐらい野菜食べなよー」


「いいんだよ、俺は痩せてっから」


「え、何、それ私が太ってるってこと?!」




晋助は私の方を見て怪しく笑うと、

むに、とTシャツに隠れた二の腕を摘んできた

それを私は慌てて振り払う




「ちょ!」


「此処とか。ま、胸には足りてねェみたいだけどな」


「セ、セクハラ!」


「何ィイ!高杉てめぇにセクハラとは何事だァアアア!」




どこから私達の会話を聞いていたのか、私がそう言うと銀ちゃんが血相を変えて近寄ってきた。

晋助はめんどくさそうな顔をしてから、何もなかったように総悟とトシの方へ逃げてしまった。




それからも暫くバーベキューは続いて、

あれ程あった食材は全部私達の胃へと入ってしまった。

その後、スイカ割りは時間の関係でやらなくなってしまったものの、

みんなで早食い競争をしたりしてスイカを美味しく頂いた。


そして私達はある程度の片付けをしてから、花火に移った。


















「ねー、火はー?」


「ん、俺のライター」


「うわ、マヨネーズとかキモ!土方キモ!」


「うるせぇぞ総悟」



花火セットについているロウソクを持ちながら、私はトシからライターを受け取った。

火を付けて石に蝋を垂らして、素早くロウソクをそれにくっつける。

それが終わると私はくるりと振り返り、花火の束を見つめる。




「んー、どれからにしよ」


「んじゃ俺はこれにしますぜ」


「え、でも総悟それは・・・」




私が選んでいると横に来た総悟は、けして手持ち花火とは言えないものを手に取って離れていった。

あんなのさっきまであったかな・・・と思うくらいの代物。

しかも総悟は煙草を吸わないのにポケットから100円ライターを取り出し、その花火に火を付けた。

その花火は、本来なら地面に置いてやる打ち上げ花火。

あんなの持って大丈夫なんだろうか。




「食らえ土方コノヤロー」


「は・・・?」




総悟は花火の出口をトシに向けその場に片膝を着いた。

それに気付いたトシは吸い始めたばかりの煙草を地面に落としてしまった。

次の瞬間、ボンッと大きな音を立てて花火がトシに向かって発射される。

トシは危機一髪で避けたものの、尻餅をつき後ろにひっくり返ってしまった。

それを見た総悟は小さく舌打ちをする。




「チッ、外しちまいやしたか・・・」


「総悟テメェエエエエッ、何考えてんだコラァアアア!!」




トシは素早く立ち上がり、総悟に向かって怒鳴り声を上げながら走ってこちらに向かってきた。

勿論捕まったらまずいことになるので、総悟はその場から逃げ出す。

二人とも私の横を凄いスピードで通り過ぎていって、すぐに見えなくなるほど遠くへ行ってしまった。




「ホントあいつら仲良いよなー銀さんあの輪には入れないわー」


「つか俺もさりげ危なかったの、総悟の野郎わかってんのか」


「二人とも田圃に落ちたりしなきゃいいけど・・・」




残された私達は思い思いそう呟くと、気を取り直して花火を続けることにした。


七色に色が変わっていく花火をやったり、数本一気に火を付けたり、

煙でなにかを書いたりして遊んでいると、結構あっという間に花火はなくなってしまい、残るは線香花火だけとなった。

その頃にはやっと総悟もトシも戻ってきて、二人とも汗だくで息を切らしていた。




「二人ともおかえり、遅かったね」


「土方のヤローがしつこくて10キロ近く走ったんでねィ」


「ばっ、元はと言えば、テメェのせいだろうが・・・っ、」


「二人のこと待ってたんだよ、早く線香花火やろうよ」




なんだかまた喧嘩を始めそうだったから、私は二人に少し強引に線香花火を持たせた。

既に準備万端な晋助と銀ちゃんの元に二人を連れて行き、ロウソクを囲むように座った。

ロウソクはいっぱい花火のセットを買っから何本かあり、それ全部火を付けてある。

座り順は、私、晋助、銀ちゃん、トシ、総悟。

そして全員で顔を見合わせると、銀ちゃんがニヤリと笑う。




「最後まで残った奴は、一人指名して言うこと一つだけ聞かせられる、ってのでどうよ」


「それはつまり俺が残って土方死ねって言えば死ぬってことですよねィ」


「テメェには死んでも負けねえぞ総悟」


「いや死ね土方」




また二人が言い合いを始めている中、

銀ちゃんは晋助の方を向き指をさした。




「俺、お前には負けないから」


「はァ?なんで俺なんだよ」


「なんでも!」




そう言った銀ちゃんは、「よーし、勝つぞー」と意気込んで線香花火を持ち直した。

晋助は納得いかない顔をしつつも、顔をロウソクの方に向けた。










「じゃ、いくよー」





私が「よーい、スタート」というと、5人同時に一番近いロウソクに線香花火を近付け火を付ける。

大体みんな同時に火は付き、一瞬にしてみんな無言になった。

でもその無言はほんの数十秒の話で、私達の勝負は静かに終わるわけがない。

まず動き出したのは、やっぱり総悟だった。




「死ねィ土方ァ!」


「をぁっ!」




総悟は真面目にやっていたトシへ肘鉄を思いきり入れる。

不意打ちを食らったトシは、ぐらり、と体勢を崩してしまい、火玉はぽろりと落ちてしまった。

がしかし、トシもやられるだけではなかったようで、崩れかけた体勢で総悟の脛辺りを蹴り飛ばした。

それによって体勢を崩した総悟も、火玉を落としてしまう。

そして災難なことに、




「ちょ、ま、こっちくんなァアアアア!!」




トシが倒れる方向には銀ちゃんがいて、

銀ちゃんの叫びも虚しく二人はぶつかり、倒れ込んだ。

勿論、銀ちゃんの線香花火の火玉もその衝撃と共に落ちてしまった。





「ちょ、三人とも何してんのー!」


「いや、俺のせいじゃないし!土方お前どうしてくれるんだよ俺の火玉ァ!」


「元はと言えば総悟だろうが!」


「もー喧嘩はやめてって・・・・・・ああっ!落ちちゃった!」





話していたせいか、寿命のせいか、大きく火花を散らせていた火玉が落ちてしまった。

私は落ちてしまった火玉が消化されるのを見てから、そっと晋助の方を見てみる。

すると晋助の持つ線香花火の火玉はまだ元気よく火花を散らせていた。











「俺の勝ちだな」






晋助がそう言った瞬間、火玉は静かに落ちていった。




「じゃ、晋助は誰にするの?」


「んなの、に決まってんだろ」


「え、私?」


「ちょ、高杉!お前下ネタとかは絶対やめろよ俺は許さねえぞ!」




銀ちゃんは本当に火玉が落ちたのがショックだったのか、

若干涙目になりながらそう声を上げた。

晋助はニヤリ、と笑ってから口を開いた。


































88
 (・・・・・・保留で。)
 (え?!)
 (高杉お前そんなこと言って俺達がいないとこでを・・・!!)
 (銀時お前そろそろうるせぇよ)