どんなに文句を言ったって、喧嘩したって
晋助は何故だかすっごいモテるしく・・・
私は時々呆れてしまうような嫌がらせをされる。
どうやら私は晋助のことが好きな子達から僻まれているらしい。
別に私はあいつのことを好きなんて一度も言ったことないし、
全て相手側の勝手な被害妄想なんだけど。
やっぱり迷惑だし、むかつくし、できることならやめて欲しい。
つか私に文句言う前に、さっさと晋助捕まえろっての!あいつフリーなんだから!
自分がうまくいかないからって八つ当たりするなんて糞だろ、糞!
「さーん?さっきからあたし達の話聞いてる?」
「ああごめん、全然聞いてなかった。超音波みたいなんだもん」
そして現在進行形で、私は女の子数人に囲まれている。
トイレ行こうとしたら拉致られた。まじトイレ行かせてくれトイレ!もれる!
連れてこられた場所は校舎裏で、なんてゆーかまあ、ベタ。
んで着いた途端一発叩かれた。叩いてきた子の顔を私は知っていた。
ついこの前、私の前で晋助にフラれた女の子。だって昼休みに告ってんだもん。
目の回り真っ黒で、睫毛ビンビンで、髪の毛明るくてクルクルで。(多分頭の中はクルクルパー)
いかにも今時の女の子って感じ、世間的に言えばギャルというやつ。
あの時は涙で顔がホント酷いことになってたなー、なんて、実は今考えている暇はない。
「あんたさァ、今の状況分かってる?」
「んーと、凄い香水臭い女の子達に囲まれてる」
「っ、むかつく!」
パシンッと乾いた音が耳元で聞こえた。
「ぃっ!」と反射的に声を出すと、それに続いて頬がヒリヒリし始める。
こりゃ多分付け爪で引っ掻かれたな。顔に傷つくるなよ一応女の子なんだから私。
「痛いんですけど」
「ぁ、当たり前でしょ叩いたんだから!」
「つかさ、フッたのは晋助じゃん、八つ当たりとかやめて欲しいんだけど」
「あんたが晋助の隣にいるから・・・!」
「私は晋助と付き合ってなんかないし。フラれたのは単なるアンタが駄目だったからでしょ!」
私がそこまでいうとその子は泣き出した。そして周りにいた女の子達がざわつき始める。
まあ、ちょっとキツい言い方だったかもしれないけどそれは事実だもん。
晋助あの子が言ってから凄いなんか言ってたし。(ケバイやら臭いやら不潔やら)
あの時は流石に女の子に同情したけど、自分も被害にあっちゃぁ同情なんかできない。
私は叩かれた頬を抑えて血が出てないかを確かめた。
どうやら血が出るほどではなかったみたいだけど、やっぱりヒリヒリする。
この場合って、私もやり返していいんだろうか。
「ねえ、、今の言い方って酷すぎるんじゃない?」
「そうよ、アンタは高杉くんに相手にしてもらってるからそんなこと言えるんでしょ?!」
「そんな可愛くもないくせに、なんであんたなんかが高杉くんの近くにいるんだか・・・」
そんなことを考えていると今度は違う女の子に胸倉を掴まれ、
他の周りの子からも髪を引っ張られたり、文句を言われたり、
なんかこれホントいじめみたいなんだけど、多分この光景凄いよ。
胸倉を掴んでいる女の子は頭に血が上っているのか、
自分が被害に遭ったわけではないのに「なんか言えよっ!」と怒鳴り始めた。
そしてその子の空いている手が宙に上がるのが私の視界に入った。
あ、やば、またやられる・・・!
私がそう思い咄嗟に目を閉じると、
今度は頬に痛みがくることはなく、逆に胸倉が離され楽になった。
目を閉じている間に女の子達の小さい悲鳴が聞こえた。
なんとなく、目を開けなくても、目の前の光景が予想できた。
「おい、テメェ等なにしてんだ」
「た、高杉くん・・・!!」
ほらやっぱりな。なんてタイミング良く出てくるんだよ、どっかで見てただろ。
そんなこと思いながらも、今は正直感謝してる。
だってこんな痛いこと早くやめたかったし。そろそろ私も怒りそうだったし。
「晋助ぇっ、なんであたしじゃいけないの?!なんでこの子なの?!あたしにしてよぉ!!」
晋助が来るとさっきまで泣いていた子は晋助の前に立ち塞がり、
晋助のYシャツを掴んで懇願した。
そんなの通じないのになあ。
「何言ってんだお前ェ、馴れ馴れしく触んなや」
「きゃっ」
殴ったりはしないものの、軽く女の子を突き飛ばす晋助。
そして私の胸倉を掴んでいた女の子を睨み付けると、女の子は身震いをした。
「とっととその女連れて失せろ」
と、突き飛ばした女の子を指さした。
その子は下唇を噛みながら突き飛ばされた子の側に寄ると、
大声で叫んでからどこかに消えていった。
「そ、そんな女なんてねぇっ!!!
「熨斗付けてくれてやるっつーの!」
「返品届付けて返すわ」
(ちょ、返されたら私またボッコボコなんだけど!)
(冗談に決まってんだろ。ホラ、顔見せろ)
(ったくよー顔に傷とか!嫁に行けなくなったらどうしてくれるんだ!)
(あ?お前はもう嫁ぎ先【俺】って決まってるからいいだr…)
(あ、やば、私トイレ行きたかったんだー!もれるー!)
(………テメェ)