いつかの風景。

それは、いつかの夢への道しるべ。


















「おはようございます」


は自隊の隊長に挨拶する。


「あぁ。」


それだけしか返ってこないけど、それでも少しだけ満たされた気分になる。













十番隊末席。

遠い遠い小さな、でも大きな背中を追いかけ続けて幾年。

想いは膨らむばかりで。

でも、それは届く事はなく。















いつもと同じ朝を迎えた。

出勤のために家を出たは、何気なく十番隊の庭に立ち寄った。

そこには真っ白な猫が住み着いていて、この前たまたまそれを見つけた。

それから3日に1回様子を見るために、朝の出勤前にふらりと立ち寄る。

今日もその日がきたから、ミルクを持っていた。

















あの角を曲がって。















曲がったら、先客がいた。










はっと息を呑んで、影に隠れる。

銀髪が見えた気がした。

そっと覗き込んで、目を見開いた。




「隊長が、いる・・・。」






白い猫は彼に擦り寄る。

それに答えるように彼は猫のお腹を撫でている。






(隊長って、あんな顔するんだ・・・。)








どこか穏やかな、でも、なにかを思いに耽っているような。




(・・・かっこいい・・・)




銀髪が朝日を反射して、翡翠の瞳はまっすぐで。




恋焦がれた。




白い猫に、少しだけ、嫉妬した。









「にゃー、」





白い猫がこちらをみて、鳴いた。






早く出てきなよ、と言われた気がした。






「そうだな。」



彼は猫に答えるようにそういうと




、いるんだろ?」




と、いった。








「も、申し訳ありません!」



影から飛び出して頭を下げる。






「日番谷隊長がいらっしゃったので邪魔してはいけないと思い、」

「かまわねぇよ。」





そう言って彼の瞳はこちらに向いた。





「それ。こいつにやるんだろ?」

「え?あ、はい。」




そう答えると、猫は計ったようにこちらにやってくる。

そしての足を前足でトンと触れた。




「あ、ごめんね。今あげるから。」




ミルクを持ってきた皿に注いでやると猫は飲みだす。

その様子を彼はじっと見ていた。





「あの、」

「なんだ?」








恋焦がれた彼がここにいる。

あたしの目の前にいる。

追いかけていた背中がここにある。

あたしを真正面から見ている。








「日番谷隊長はいつからご存知で?」

「先週の金曜日だ。」

「先週?」

「あぁ。お前がこいつに話し掛けてるのを偶然見かけた。」

「!」







顔が熱くなった。





見られてた・・・!!!





世話をしているところを、じゃなく、話し掛けているところを。





内容を聞かれてた?





ちょうど1週間前の今日のことだ、まだ鮮明に覚えている。

この猫に話した事。

それは、







「悪いと思ったんだが聞こえちまってな、」





彼はがしがしと綺麗な銀髪を掻く。





「その、お前が俺に好意を寄せてくれてるってこと。」

「ぁ・・・///」





















『あたしね、日番谷隊長が好きなんだ。あの人ね、すごくかっこいいし、何でもできる天才なんだけどね、
ホントは脆いと思うんだ。』

『にゃー』

『でね、ずっと背中を追いかけてるんだけど全然追いつかなくて。支えてあげたいなぁって思うんだ。
上司に向かってこんな事言えないけどさ。』

『にゃー』

『きっと日番谷隊長はあたしのこと知らないんだよ。あたしも、本当の隊長は知らないんだけどさ。』

『にゃー』

『でも、知らない隊長をあたしは知りたいと思う。そして、あたしは支えてあげたいんだ。』

『にゃー』

『傲慢かな?自己中かもね。』

『にゃー』




















鮮明に覚えてるそれは、の本心。



「申し訳ありません!偉そうな事をぺらぺらと!!」



深く深く頭を下げた。



「構わねぇ。てゆーか、びっくりした。」

「へ?」


頭を上げて彼を見ると、彼は少し笑ってて。


「俺のこと、よく見てるんだなぁって。」

「っ・・・」


その笑顔がとても綺麗だったから、みとれた。






「実はずっとお前の事見てたんだ、。」

「え?」

「末席の女。書類は正確で早くて、五月蝿くなくて、綺麗に笑って。ずっと見てた。」

「隊長?」

「俺さ、お前の事、好きなんだ。」











驚いて、固まって、理解して、涙が流れた。









「う・・・そ・・・」

「ホントだ。」





自分を好きだと言ってくれている。






「お前は・・・は、どうだ?」

「あ、たしも、好き、です・・・」

「よかった。」







そう言って抱きしめられる心地よさを知った。

そう言ってキスの温かさを知った。





白い猫がにゃー、と鳴いた。








おめでとう。








そう言ってる気がした。



























真っ白な猫は、それ以来姿を現さなくなった。


あの日から、彼との付き合いは続いていて。


もうすぐ子供が生まれる。





「冬獅郎」

「どうしたんだ?」



大きくなったお腹を擦りながら彼を呼んだ。



「あの時の白い猫、今どうしてるかな?」

「さぁな。きっと立派な奴になって生きてるんじゃねぇの?」

「そっか。」



強く、生きててくれたらいい。



冬獅郎とあたしを繋いでくれたあの猫を想いながら、お腹を撫でた。









どこかで、にゃー、と鳴いた気がした。


















(わたしはここにいるよ。ずっとみてるよ。)










@あとがき

温かい感じをを目指してみました。
白い猫が繋ぐ2人の物語。
どうでしょうか?
これは輿嬢獅馨哉さまへの贈り物とさせていただきます!
「改装移転おめでとうございます+相互ありがとうございます」の気持ちをこめて。
お持ち帰りは輿嬢獅馨哉さまのみ!
焼くなり煮るなり捨てるなりして下さい。
これからもよろしくお願い申し上げます!





空野さんにいただきました!
獅馨哉こーいう感じの小説大好きなんです。
落ち着きますねー・・・(´∀`ヽ)
ねこさん、きっと元気ですよね・・・!ぇ
空野さん小説ありがとうございました!
これから相互さまとして宜しくお願いしますね!