「ねえ、冬獅郎」


「あー?」


「ちょ、何そのやる気のない返事!」






夏休みに入った私達は、久しぶりにデートをすることになった

とは言っても別に遠出するわけではなくて、

最近できたショップングモールに行くことになった。


でもせっかくのデートなのに冬獅郎はさっきからこんな調子で、

なんだか私の方も調子が狂ってしまいそう。

冬獅郎が暑いの嫌いなの知ってるけどさ。




「今は暑くないじゃん!元気だしてよー」


「わかってるって。少し時間かかんだよ」




苦し紛れの言い訳を言った冬獅郎は、

道端でもらったうちわを扇ぎながら小さく溜息を吐いた





「で、なんだよ」


「ああそうだ、これさ、私に似合うと思う?」



私は近くにあったあるものを掴み、自分の身体に当てて冬獅郎の反応を伺った。

するとみるみるうちに顔を歪めていくのがわかる。

え、やっぱり似合わないかな?でしゃばったかな?





「・・・・・・似合わねえ」

「えー!でもさでもさ、もう黒着てもいいと思わない?!」

「何言ってんだよ、胸ないくせに」

「ちょ、それ言わないでっての!」




私が見せたのは黒のビキニだった。

去年買ったのはもうなんか飽きちゃったし、年齢的にそろそろ黒いいかなって・・・

まさかこんなにも不評だとは思わなかったし・・・。


私は渋々とビキニを元あったところに戻し、近くにあった他のビキニを数着手に取ってみた。






「じゃあさ、この花柄とか・・・」

「まず一海もプールも行かねえだろ」

「え、行こうよー」

「なんでわざわざ太陽の下に行かなきゃいけねーんだよ」

「じゃあ修兵とか恋次達と・・・」

「それも駄目だ」




そう少し強めに言った冬獅郎は、私の手からビキニを奪い元に戻してしまった。

そして私の手を取り歩き出す。





「あっ、ちょっと!」

「俺以外の奴に見せるとか、有り得ないだろ!」

「えっ」





思いもよらない発言に言葉を失っていると、

「腹減った、飯行くぞ」とまた手を引かれる。



後ろからだから顔は見えないものの、冬獅郎の耳は赤く染まっていて、

私の口元は自然と緩んでしまった。


















冬男vs夏女

 (じゃあさ、冬獅郎の前ならいい?)
 (・・・・・・は?)
 (だったら、庭でビニールプールでもいいよ!)
 (冬獅郎は部屋から見ていてくれていいし・・・)
 (ぶっ!・・・わかった、行くから!行くからそれはやめろ!)