まだ蝉も鳴き始めたばかりの早朝、私は家を出る。
夏休みに入ってから、健康やダイエットのために朝ランニングすることにして、今日で一週間が経つ。
いつもなら三日も持たない私だけど、今回は違った。
その理由は不純で、他の人に言ったら呆れられるかもしれない。
でも、それでもいいと思えるくらい、私は彼に夢中だった。
「おっ、今日も来たのか!」
家を出て5分くらい走ったところに、小さな公園がある。
私がそっと中を伺うと今日も彼はいて、既に大量の汗をかいていた。
そんな彼は私に気がつくと大きく手を振ってくれる。
その時の笑顔がたまらなくかっこよくて、私はつい頬を緩めてしまう。
「山本くん、おはよ」
「おはよ、毎朝続いてるんだな!」
「うん、なんとかね!」
私はそう言いながら山本くんに近付くと、
途中で買ってきたお茶をさり気なく差し出した。
「あの、さ、これあげる!差し入れ!」
「お、サンキュ!丁度喉乾いてたんだわ!」
私が山本くんの荷物が置いてあるベンチに腰掛けると、
山本くんは自分の荷物をギリギリまで端に除けて私の隣りに座った。
それが済んでからお茶を渡すと、山本くんは一気に半分くらいまで飲んでしまった。
「ぷはぁっ、生き返る!」
「そ、そんな喉乾いてたの?」
「ん〜、お前からもらったヤツだからかもな!」
「えぇっ?!」B
こっちを向いてニッと笑った山本くんは、もう一口お茶を飲む。
でも私はそんなところではなくて、必死に山本くんの発言を理解しようとしていた。
私からもらったから、いっぱい飲めちゃうってこと、だよね?
生き返る・・・って言ってるんだから、良い方の意味でだよね?
え、何、これ!どう解釈すればいいの?!
これって私が望んでるような解釈をしていいのかな、
でも山本くんの性格上、普段からそういうこと平気で言いそうだし・・・
・・・・・・でも、どういう気持ちで言ったにしろ、凄く嬉しいな。
「・・・どうかしたか?」
「え、あ、いや、ううんなんでもないよ!」
「ふーん?あ、お前さ、野球とかに興味あるか?」
「うん、できないけど観戦するのは好きだよ!」
「じゃ、これ一緒に行かねえ?」
「えぇええ?!」
プレイボール!
(●●対▲▲の試合なんだけどさ、)
(ぇ・・・、え、ええっ)
(今日の夕方からなんだけど、空いてるか?)
(ぅ、うん!!空いてる!!大丈夫!!絶対行きますっ!!)
(そりゃ良かった!じゃ、夕飯も一緒に食おうな。奢るからさ)
(!!!!!(これもうデートじゃん!!))