ちょっと前まで、笑う事なんて、もう一生ないと思った
複雑な家庭の事情で、俺はすっかり感情を鎖し
立派な“不良”に成長した
そんな荒れ狂う俺を、もう一度笑わせてくれたお前
「ねえ、笑ってみなよ!」
もう日常茶飯事になった他校の奴等との喧嘩
数箇所に傷をつくりながらも、服についている血は返り血だった
そんな血塗れな俺を見たお前は、怖がりもせずに近付いてきて俺を見上げてそう言った
「なんだお前・・・」
「あ、ごめん、私っていうの!」
「んな事聞いてねえよ。俺に関わんな」
「なんで?いいじゃん。それに・・・キミとっても悲しそうな顔してるよ」
「あ?」
お前は俺の顔をじっと見つめると、そっと頬に触れた
「笑いなよ。笑ってれば、きっとイイ事あるからさ!」
そう言って頬を優しく撫でてから手を離し、
俺に背を向けた
「それじゃ、それだけだから。早く服洗わないと落ちなくなっちゃうよ!」
「ぉ、おい・・・」
「またお話しようね!」
バイバイ、と手を振って消えていったお前
「ハッ、なんなんだよあいつ・・・」
その瞬間、俺は何年振りかに笑った
「しーんすけっ!」
「おう、今日も来たか」
雲一つ無い青空の下、俺は屋上で仰向けに寝転びながら視界に入った奴に視線を向けた
「また授業さぼってー、駄目じゃん!銀八先生泣いちゃうよ!」
「銀八なんざ関係ねぇよ」
「まあ、楽しいならいっか!」
はニコニコしながら俺の隣に腰を下ろすと、
高杉の顔をのぞき込む
「笑ってますかー、晋助くん!」
「あぁ、笑ってる」
君と居ると
笑わずにいられない
(晋助、表情豊かになったよね!)
(あーそうか?)
(うん、なんかイイ事あったんですか奥さん!)
(誰が奥さんだコラ)
((俺が笑うようになった理由は、お前に出会えたから))